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= アカマツ ''Pinus'' ''densiflora'' Siebold & Zucc.=
 
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== シノニム ==
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* ''Pinus'' ''densiflora'' Siebold et Zucc.(広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会 1997で採用.)
  
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== 解説==
 
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広島県は全国でアカマツ林の面積がもっとも広く,広島県(1987)によればアカマツ林の 総面積は210,700haで,そのうち人工林は27,000ha,天然林は183,700haである.広島県のアカマツ群落の研究はToyohara(1984)に詳しい.
 
* 常緑針葉高木.
 
* 常緑針葉高木.
 
* マツという名は植物学上はないが,アカマツ・クロマツとそれらの雑種であるアイグロマツが宮島には自生している.盆栽で有名な「宮島五葉」は宮島の産といわれるが,現在ゴヨウマツ(一名ヒメコマツ)の自生は宮島で確認されていない.
 
* マツという名は植物学上はないが,アカマツ・クロマツとそれらの雑種であるアイグロマツが宮島には自生している.盆栽で有名な「宮島五葉」は宮島の産といわれるが,現在ゴヨウマツ(一名ヒメコマツ)の自生は宮島で確認されていない.
 
* 宮島では駒ヶ林の岩場などがアカマツの生育適地と思われる.マツの花は4月下旬に咲き,2年かかって種子が熟す.1本の枝上に次々と並んでいるから,その成熟の段階が容易に観察できる.花の時期は,クロマツの方がアカマツより早い.宮島では4月25日ごろがクロマツ,4月30日から5月はじめがアカマツの花盛りで,水たまりに花粉が一面に浮いているのが見られる.
 
* 宮島では駒ヶ林の岩場などがアカマツの生育適地と思われる.マツの花は4月下旬に咲き,2年かかって種子が熟す.1本の枝上に次々と並んでいるから,その成熟の段階が容易に観察できる.花の時期は,クロマツの方がアカマツより早い.宮島では4月25日ごろがクロマツ,4月30日から5月はじめがアカマツの花盛りで,水たまりに花粉が一面に浮いているのが見られる.
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* 沿岸部では松枯れや遷移の進行に伴い,美しいアカマツ林は減少している.
  
 
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=== 花期 ===
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* 4月下旬〜5月中旬(宮島)
 
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== 分布・産地・天然記念物 ==
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=== 分布 ===
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* 広島県では沿岸部から中国山地まで広く分布.
  
== 分布・産地・天然記念物==
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=== 産地 ===
*広島県では沿岸部から中国山地まで広く分布.
 
**沿岸部では松枯れや遷移の進行に伴い,美しいアカマツ林は減少している.
 
*広島県は全国でアカマツ林の面積がもっとも広く,広島県(1978)によればアカマツ林の 総面積は210,700haで,そのうち人工林は1,500ha,天然林は162,400haである.
 
*広島県のアカマツ群落の研究はToyohara(1984)に詳しい.
 
 
 
== 産地 ==
 
 
* 広島県廿日市市宮島町
 
* 広島県廿日市市宮島町
 
* 広島県東広島市西条鏡山 広島大学西条キャンパス
 
* 広島県東広島市西条鏡山 広島大学西条キャンパス
  
== 標本==
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=== 天然記念物 ===
* 戸河内町捨谷(yy-6264),広島市日浦山(yw-5945),府中町水分峡(mt-6310),呉市灰ケ峰(mt-7238),庄原市葦嶽山(mt-7873),黒瀬町国近(mt-7932),油木町阿弥陀山(mt-8242),庄原市大黒目山(yw-4929),尾道市鳴滝山(mt-9961),芸北町一兵山家山(mt-11118),大野町経小屋山(mt-1895),豊浜町豊島(mt-12015),安浦町久多島(hh-7600),大野町経小屋山(hh-7585),江田島町古鷹山(mt-13287),廿日市市鳥帽子岩(hh-7752),三良坂町沖江(kk-1535),総領町木屋(kk-1786),熊野町石嶽山(yw-902),因島市白滝山(yk-2110),大和町下徳良(sf-2315),内海町横島(sf-2744),三原市大平山(yk-4249),瀬戸田町垂水観音山(sf-4623),福山市仙酔島(sf-4754),因島市青影山(yk-4859),神之瀬峡(mt-18063),甲山町今高野山(ns-1518),向島町高見山(yk-5853),土生町宇和部(yk-5972),西城町三坂(hn-1163),油木町上野(sf-6453),河内町竹林寺(yk-6601),本郷町用倉(yk-6633),御調町下山田(yk-6915),府中市河佐峡(sf-7127),東城町森(hn-1371),世羅町新山(yk-7249),大和町河頭(yk-7531),上蒲刈町田戸(mt-15996),東広島市蚊無奥山(mt-16500),口和町常定(hn-328),三和町井関(sf-930),野呂山(mt-16676),豊松村有木(sf-1455),久井町江木(sf-1917),甲奴町弘法山(sf-2015),比和町釜峯山(kk-2834),上下町岳山(yk-8487),佐伯町羅漢山(hh-8845),甲山町別迫(yk-9572),神辺町東中条(sf-10230).
 
  
== 慣用名==
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== 標本 ==
*メマツ
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* 戸河内町捨谷(yy-6264),海田町日浦山(yw-5945),府中町水分峡(mt-6310),呉市灰ヶ峰(mt-7238),庄原市葦嶽山(mt-7873),黒瀬町国近(mt-7932),湯来町阿弥陀山(mt-8242),尾道市鳴滝山(mt-9961),芸北町一兵山家山(mt-11118),大野町経小屋山(mt-1895),豊島(mt-12015),安浦町久多島(hh-7600),廿日市市烏帽子岩(hh-7752),三良坂町沖江(kk-1535),総領町木屋(kk-1786),熊野町石岳山(yw-902),因島(yk-2110),大和町下徳良(sf-2315),内海町横島(sf-2744),三原市大平山(yk-4249),生口島(sf-4623),仙酔島(sf-4754),神之瀬峡(mt-18063),甲山町今高野山(ns-1518),向島(yk-5853),西城町三坂(hn-1163),油木町上野(sf-6453),河内町竹林寺(yk-6601),本郷町用倉(yk-6633),御調町下山田(yk-6915),府中市河佐峡(sf-7127),東城町森(hn-1371),世羅町新山(yk-7249),大和町河頭(yk-7531),上蒲刈島(mt-15996),東広島市蚊無奥山(mt-16500),口和町常定(hn-328),神石郡三和町井関(sf-930),野呂山(mt-16676),豊松村有木(sf-1455),久井町江木(sf-1917),甲奴町弘法山(sf-2015),比和町釜峯山(kk-2834),上下町岳山(yk-8487),佐伯町羅漢山(hh-8845),甲山町別迫(yk-9572),神辺町東中条(sf-10230)
 
 
== 広島県方言==
 
*アカズレー
 
*アカマツ
 
*アカハダ
 
*オナゴマツ
 
*オンナマツ
 
*マツ
 
*メンキ
 
*メンマツ
 
  
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== 慣用名・英名・広島県方言 ==
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=== 慣用名 ===
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* メマツ
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=== 英名 ===
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=== 広島県方言 ===
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* アカズレー
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* アカハダ
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* オナゴマツ
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* オンナマツ
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* マツ
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* メンキ
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* メンマツ
 
== 備考==
 
== 備考==
 
* 環境庁コード: 9000
 
* 環境庁コード: 9000
  
 
== 文献(出典)==
 
== 文献(出典)==
* 広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(編).  1997.  広島県植物誌.  Pp. 832.  中国新聞社, 広島.
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* Toyohara(1979),豊原(1981),Toyohara(1984),吉野(1989),藤原ほか(1991),広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(1997),三次地方林業同志会(1997)
* 三次地方林業同志会.  1997.  広島県樹木方言集.  -viii + 57 pp.  三次地方林業同志会, 三次.
 
*954
 
*1955
 
*Toyohara 1979
 
*豊原 1981
 
*Toyohara 1984
 
*吉野 1989
 
*藤原ほか 1991
 
  
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== 引用文献 ==
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* 広島県.1987.広島県のメッシュ森林利用区分.91 pp.広島県.
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* Toyohara, G.  1984.  A phytosociological study and tentative draft on vegetation mapping of the secondary forest in Hiroshima Prefecture with special reference to pine forest.  J. Sci. Hiroshima Univ., Ser. B, Div. 2,  19: 131-170.
 
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2011年9月1日 (木) 10:20時点における版

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アカマツ林(広島県東広島市西条; 撮影: 坪田博美, May 13, 2010)

アカマツ Pinus densiflora Siebold & Zucc.

シノニム

その他

  • Pinus densiflora Siebold et Zucc.(広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会 1997で採用.)

分類

種子植物門 Spermatophyta > 裸子植物亜門 Gymnospermae > マツ科 Pinaceae > マツ属 Pinus

解説

広島県は全国でアカマツ林の面積がもっとも広く,広島県(1987)によればアカマツ林の 総面積は210,700haで,そのうち人工林は27,000ha,天然林は183,700haである.広島県のアカマツ群落の研究はToyohara(1984)に詳しい.

  • 常緑針葉高木.
  • マツという名は植物学上はないが,アカマツ・クロマツとそれらの雑種であるアイグロマツが宮島には自生している.盆栽で有名な「宮島五葉」は宮島の産といわれるが,現在ゴヨウマツ(一名ヒメコマツ)の自生は宮島で確認されていない.
  • 宮島では駒ヶ林の岩場などがアカマツの生育適地と思われる.マツの花は4月下旬に咲き,2年かかって種子が熟す.1本の枝上に次々と並んでいるから,その成熟の段階が容易に観察できる.花の時期は,クロマツの方がアカマツより早い.宮島では4月25日ごろがクロマツ,4月30日から5月はじめがアカマツの花盛りで,水たまりに花粉が一面に浮いているのが見られる.
  • 沿岸部では松枯れや遷移の進行に伴い,美しいアカマツ林は減少している.
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2002年5月1日 2002年4月27日
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アカマツの実 アカマツ樹皮

花期

  • 4月下旬〜5月中旬(宮島)

分布・産地・天然記念物

分布

  • 広島県では沿岸部から中国山地まで広く分布.

産地

  • 広島県廿日市市宮島町
  • 広島県東広島市西条鏡山 広島大学西条キャンパス

天然記念物

標本

  • 戸河内町捨谷(yy-6264),海田町日浦山(yw-5945),府中町水分峡(mt-6310),呉市灰ヶ峰(mt-7238),庄原市葦嶽山(mt-7873),黒瀬町国近(mt-7932),湯来町阿弥陀山(mt-8242),尾道市鳴滝山(mt-9961),芸北町一兵山家山(mt-11118),大野町経小屋山(mt-1895),豊島(mt-12015),安浦町久多島(hh-7600),廿日市市烏帽子岩(hh-7752),三良坂町沖江(kk-1535),総領町木屋(kk-1786),熊野町石岳山(yw-902),因島(yk-2110),大和町下徳良(sf-2315),内海町横島(sf-2744),三原市大平山(yk-4249),生口島(sf-4623),仙酔島(sf-4754),神之瀬峡(mt-18063),甲山町今高野山(ns-1518),向島(yk-5853),西城町三坂(hn-1163),油木町上野(sf-6453),河内町竹林寺(yk-6601),本郷町用倉(yk-6633),御調町下山田(yk-6915),府中市河佐峡(sf-7127),東城町森(hn-1371),世羅町新山(yk-7249),大和町河頭(yk-7531),上蒲刈島(mt-15996),東広島市蚊無奥山(mt-16500),口和町常定(hn-328),神石郡三和町井関(sf-930),野呂山(mt-16676),豊松村有木(sf-1455),久井町江木(sf-1917),甲奴町弘法山(sf-2015),比和町釜峯山(kk-2834),上下町岳山(yk-8487),佐伯町羅漢山(hh-8845),甲山町別迫(yk-9572),神辺町東中条(sf-10230)

慣用名・英名・広島県方言

慣用名

  • メマツ

英名

広島県方言

  • アカズレー
  • アカハダ
  • オナゴマツ
  • オンナマツ
  • マツ
  • メンキ
  • メンマツ

備考

  • 環境庁コード: 9000

文献(出典)

  • Toyohara(1979),豊原(1981),Toyohara(1984),吉野(1989),藤原ほか(1991),広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(1997),三次地方林業同志会(1997)

引用文献

  • 広島県.1987.広島県のメッシュ森林利用区分.91 pp.広島県.
  • Toyohara, G. 1984. A phytosociological study and tentative draft on vegetation mapping of the secondary forest in Hiroshima Prefecture with special reference to pine forest. J. Sci. Hiroshima Univ., Ser. B, Div. 2, 19: 131-170.

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