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コケ植物用語集 −仮名順−

コケ植物の用語を集めました.コケ植物の説明で用いられるものです.コケ植物の用語をアルファベット順にならべています.


参考文献


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  • アポフィシス apophysis(→hypophysis):蘚類の蒴の基部の部分で蒴柄に続く部分.この部分はときに属に特徴的に膨れることがある.この部分にしばしば気孔が集中して分布する.頚部とも呼ばれる.ユミダイゴケ属.局所的にこぶ状突起(瘤struma;コブゴケ属)ができる場合がある.
  • アレオラ areolae:苔類の胞子表面にみられる網目状に区切られた小区画
  • アレオレーション areolation:葉を顕微鏡観察したときにみえる細胞壁の網状構造
  • アンティカル antical (postical):茎葉苔類の植物体の背面側(匍匐しているものでは上面側)を示す語.観察するひとに近いほうであり,基物からとおざかっている側を示す語(→postical lobe).特に苔類の葉で二裂する場合に,それぞれはantical lobe とpostical lobeというように区別する.
  • 彙状(いじょう) squarrose:蘚類の葉の配列状態を示すもので,葉の基部が茎に接着したり,抱いたりする一方,葉の上半部が背方に反り返った状態.
  • 腋生蘚類(えきせいせんるい) pleurocarpous mosses:造卵器が主茎から出た短い側枝の先端に形成される蘚類の仲間.(→acrocarpous mosses)
  • 延下した decurrent:葉基部の両端部が茎に沿って長い接着線をもつ様子.
  • オセルス ocellus:(→眼点細胞をみよ)

  • ガイドセル guide cells:蘚類の葉の中肋の横断面でみられる,ふつう原形質を失った大型の細胞列.
  • 仮根 rhizoid:茎の表皮細胞から生じた糸状のもの.蘚類ではふつう単細胞列で分枝するが,苔類では表皮細胞が糸状に突出したもので1細胞.植物体を基物に固定する役目をもち,維管束植物の根のような栄養吸収機能はない.
  • 仮根連結同株(新語)rhizoautoicous:外見上雌雄異株のように見えるが,実際は仮根(または原糸体)でつながっているような状態.しかし,自然状態でこれを確かめることは不可能である.
  • 花被 perianth:苔類の造卵器をとりまく袋状の構造で,カリプトラと雌包葉の間に生ずる.
  • 鎌形に... falcate-secund:(葉が)鎌形に曲がり,茎に対して一様に一方の方向を向いている様子.
  • カリプトラ calyptra:造卵器腹部が肥大成長した部分で,若い蒴を覆う器官.蘚類では帽とも呼ばれ,蒴が成熟するまで若い蒴が帽子をかぶるようにとどまる.この形が属や種の区別に用いられる.
  • 眼点細胞(がんてんさいぼう)ocellus:苔類の葉に見られる油体で満ちて,着色した特殊な細胞.
  • 瓦状(かわらじょう)succubous:茎葉苔類で植物体を背面からながめた場合(匍匐するものでは上からながめた場合)葉の重なりかたが,各葉の先端が上位につく葉の下に隠れるように重なるようなつきかた.屋根瓦と同じ葉の重なり方.(→incubous倒瓦状)
  • 偽花被(ぎかひ)pseudoperianth:苔類の若い胞子体を取り囲む繊細な鞘状構造で,包膜とカリプトラの間に形成される.ウロコゴケ類とゼニゴケ類に見られる.
  • 偽孔(ぎこう)pseudopore:ミズゴケ類の葉の透明細胞にみられる孔のようにみえる構造.
  • 気室 air chamber:蘚類の蒴壁内に発達した隙間.苔類ではゼニゴケ目の葉状体背面にある隙間で,気室孔を通じて外界と連絡.
  • 基礎膜 basal membrane:蘚類の内蒴歯の基部を構成する部分でこの縁に内蒴歯や間毛が着く.
  • 偽足 pseudopodium:ミズゴケ類とクロゴケ類にみられる胞子体を支える配偶体要素で,茎の先端部が細長く柄状に伸長した部分で,ここには葉はできない.
  • 偽毛葉 pseudoparaphyllia:蘚類の枝の基部に限ってみられる葉状のもの.毛葉とは発生的に区別されるが,外見上は区別できない.観察には茎に付着したままで行うのがよい.
  • キール keel:葉が二つ折りになっている場合の折り目.竜骨.

cuticle:クチクラ.細胞の表面を覆う細胞壁とは化学的に異なった薄い層で,維管束植物のクチクラとは異なるものと考えられている.

  • 頸部 neck:蘚類の蒴の基部を占める部分で,壷より細くなったり,逆に太く膨らむ場合もある.
  • 茎葉体 gametophore:原糸体とともに配偶体を構成する.原糸体上に生じた茎葉状体制をもつ植物体で,コケの本体をなす.
  • 舷(げん)border:蘚類の葉の縁を構成する細胞群で,葉身の内側の細胞と著しく形がことなる.ふつうは線状の細胞からなり,一部が棘状になるものもある.
  • 厚角肥厚 corner thicknings:細胞の角が局所的に肥厚すること.苔類ではトリゴンtrigoneと呼ばれる.

  • 蒴 capsule:胞子体のうち胞子をつくる組織ができる部分で,著しく膨れ,分類群に固有の外形を示す.蘚類では蓋と壷,頸が分化する.蒴壁には気孔,気室,蒴歯,口環などが分化する.苔類では上記の器官は分化しない.[原語本来の意味は器状のものを指すが,一般的には内部の組織も含めているようである(注記:出口).]
  • 蒴歯 peristome:蘚類の蒴の口部に発達する歯環で,蒴が裂開し蓋がはずれたときに現れる.1重のもの(haplolepidous)と2重のもの(diplolepidous)がある.歯環を構成する個々の歯をperistome toothという.
  • 蒴柄 seta:胞子体の部分で先端に蒴をつけ,後端は「足」となって,配偶体である茎の組織と接着している.
  • 雌器托 archegoniophore:造卵器をつけるために特殊化した苔類のゼニゴケ類の葉状体部分.造卵器をつける裂片化した盤状の部分(雌器床)と柄(雌器柄)からなる.
  • 軸柱 columella:蒴の中心部分をしめる柱状構造.エンドテシム起源の組織で,蘚類とツノゴケ類だけにみられる.
  • 歯突起 segment, process:蘚類の内蒴歯の歯状構造の本体で,基部は基礎膜に連なる.
  • シヌス sinus:苔類の2裂した裂片と裂片の間の凹み.
  • 雌包葉 perichaetial leaf:造卵器周辺の葉で,普通葉にくらべて大きく,形も異なる.中部〜基部の細胞は薄壁となり,半透明で著しく大型になる.
  • 雌雄共立同株 synoicous:造精器と造卵器が共通の苞葉に包まれて混在した状態.
  • 雌雄独立同株 autoicous:同一植物体の上に雄花序と雌花序を同時にもつ状態.
  • 雌雄列立同株 paroicous:造精器と造卵器が隣接して生じるが両者は混在することなく造卵器をとりまく雌包葉の外側に造精器が位置する状態.
  • シュートカリプトラ shoot calyptra:茎の組織が造卵器や若い胞子体を保護するように袋状に発達したもの.vaginula:鞘.蒴柄の基部を包む配偶体組織で,造卵器の基部と茎の組織が関係してできた器官.
  • シリア cilia:細かな毛状構造を指す語.内蒴歯の歯(セグメント)間の毛状のもの.苔類では葉や花被perianthの縁から生ずる一細胞列の糸状のもの.Acrobolbus.
  • スチルス stylus:苔類のウロコゴケ類の葉の腹片の基部にある糸状あるいは柱状のもの.
  • ステライド stereid:蘚類の葉の中肋の横断面で認められる小型で厚壁の細胞群.ガイドセルと対比される.
  • ストルマ struma:蘚類の蒴の頸部にある瘤状突起.
  • 尖帽状 mitriform, mitrate:蘚類の帽の形を示す語で,円錐形の帽に裂け目がないか中〜基部に数本の縦の裂け目があって,放射総称となる帽.
  • 僧帽形の cucullate:蘚類の帽の形を示す語.帽の基部に1本の裂け目ができてフード状を呈するもの.
  • 側糸 paraphysis:造精器や造卵器の間,周囲をとりまく微小な毛状構造で,ふつうは単細胞列の糸状,まれに葉状.イクビゴケ属には粘液を分泌する粘液胞をもつ特殊な形態のものもある.葉腋毛との区別は不明.
  • 全縁 entire:葉の縁に鋸歯がない状態.
  • 線状肥厚 fibrils:(ミズゴケ属の透明細胞の壁にみられるリング状の)線状肥厚.
  • 側葉 lateral leaf:茎葉体に背腹性があるとき,側方に出る葉をさす.腹葉に対する語で,苔類ではふつう単に葉とよばれる.

  • タフト tuft:茎が直立して,蜜に並行にならんで芝生状になった生育形.
  • 弾糸(だんし)elator:苔類やツノゴケ類の蒴の中につくられる糸状のもので螺旋や環状の肥厚がある.ツノゴケ類のものは肥厚がなく偽弾糸とよばれる.
  • 中心束 central strand:蘚類の茎の中心部を占める小型の細胞群で,ふつう周辺の大型の髄層細胞と比べて薄壁であるが,まれに厚壁のものもある.
  • 中肋(ちゅうろく)costa:蘚類の葉の中央を縦に走る多細胞層の中央脈.苔類ではゼニゴケ目やフタマタゴケ目の葉状体の中央部の厚くなった部分を指す.
  • 頂生蘚類 acrocarpous mosses:造卵器を茎や枝の頂端につける蘚類の仲間.したがって胞子体(蒴や蒴柄,足からなる)が茎や枝の先端に位置することになる.胞子体が形成されたあと,茎の頂端より少し基部よりの部分から新たな枝が生じてもとの茎にとってかわって大きく成長したときには古い胞子体は茎から側生しているようにみえることがある.(→pleurocarpous mosses腋生蘚類).頂生蘚類と腋生蘚類との区別は自然な分類体系によるものでなく便宜的なもの.
  • 倒瓦状 incubous:苔類の葉の重なり方で屋根瓦の重なり方と逆の状態.(→succubous瓦状)
  • トメンタ tomenta:蘚類の茎の基部を覆う密な仮根塊.tomentoseはそのような状態にあるもの.
  • トリゴン trigon:苔類の葉身細胞の角の部分の細胞壁が肥厚して三角形を呈するもの.

  • 内曲 involute:葉縁が葉の腹面側に巻きこむ状態.
  • 肉芽 bulbil:無性芽の一種で,ふつう葉腋に形成される.PohliaBryumでみられる.

  • 葉をもった状態 foliose:植物体に茎と葉の区別のある状態.
  • ハイゴケ型蒴歯 hypnoid peristome:ハイゴケ型蒴歯.
  • 配偶体 gametophyte:胞子が発芽して生じた単相の植物体.原糸体protonemaとそれから生じる茎葉体gametophoreを包括する語.
  • 杯状体 cupule:苔類のゼノゴケ類の葉状体の背面にある杯状の器官で,内部に無性芽が形成される.
  • 背片(上片)dorsal lobe:茎葉苔類の(側)葉が2裂して折れたたまれたときに背方に位置する裂片.(→ventral lobe腹片)
  • 背面 dorsal:背面(背軸面abaxial surface),葉状体の背面(地面に接していない側の面)を指す.
  • 白鳥の頸のようにくねった cygneous:白鳥の頸のようにくねった.蘚類ハクチョウゴケ属などの蒴柄に対して使われる語.
  • 薄板(ラメラ)lamella:葉の表面に縦方向に走る1細胞層で,高さ1〜数細胞の板状の突起.スギゴケ科やセンボンゴケ科の種によく発達したものがみられる.
  • パラフィリア paraphyllia:葉間の茎の表面から生じる不規則に分枝した小形の葉状物.イワダレゴケ属
  • 反曲する revolute:葉縁が背面側に巻きこむ状態.(→involute内曲)
  • ピット pit:肥厚した細胞壁をもつ細胞で,局所的に肥厚せずに薄壁で隣接する細胞と接しているような場合,その薄壁部分をさす.(→pore孔)
  • ビッタ vitta:苔類の葉基部中央部ある長軸方向に伸長した細胞群.Diplophyllum.
  • 腹苞葉 bracteole:苔類の造卵器周辺の特殊に分化した腹葉.
  • 腹片 ventral lobe:茎葉苔類の(側)葉が2裂して折れたたまれたときに腹方に位置する裂片.舌状や袋状など形・大きさは多様.(→dorsal lobe背片,上片)
  • 腹葉 amphigastrium:茎葉体に葉が3列に配列し,背腹性があるときにその軸の腹面に位置する葉.(→underleaf)
  • 腹葉 underleaf:茎葉体に葉が3列に配列し,背腹性があるときにその軸の腹面に位置する葉.(→amphigastrium)
  • 腹翼 vaginant lamina:蘚類のホウオウゴケの仲間などの葉の基部が2重になった部分.
  • 腹鱗片 ventral scale:苔類のゼニゴケ類の葉状体腹面にある鱗片状の構造.
  • 付属物をもった内蒴歯 appendiculate:ハリガネゴケ属などでみられる完全蒴歯perfect peristomeをもつ仲間でみあれる蘚類の蒴歯の構造で,短い横棒をもつ内蒴歯を指す語.
  • 付着線 insertion:葉が茎につくときに接着する状態で,葉を茎から除いたときに茎に残された付着線が一定(斜めか直角)になる.
  • プロセス processes:蘚類の内蒴歯の歯(teeth of inner peristome)のこと.
  • 閉果の cleistocarpous:蘚類の蒴に蓋と壷が分化せずに,不規則に裂開する蒴.キンチャクゴケ属.
  • ベルカ verruca:苔類の葉のクチクラの一種で,微小な無数のざらつき構造.
  • 包膜 involucle:造卵器や造精器を包む膜状構造で,苔類のフタマタゴケ類,ゼニゴケ類,ツノゴケ類などにみられる.
  • 苞葉 bract:造卵器と造精器を取り囲む葉で,普通葉とは形大きさが著しく異なる.苔類ではこの形が重要な分類基準となっている.蘚類の場合,造卵器,造精器を取り巻く苞葉についてそれぞれ雌苞葉(perichaetial leaves),雄包葉(perigonial leaves)と呼ばれる.
  • ポア pore:苔類のゼニゴケ目の仲間の葉状体上面にみられるアレオラ小区画の中心に位置する孔(air pore)(→気室孔).ミズゴケ類の葉の透明細胞にみられる円形の穿孔あるいは円形の薄壁部分.蘚類では葉基部の細胞でとくに局所的に肥厚していない部分(pit).

  • マゴケ型蒴歯 bryoid peristome:マゴケなどで見られる蒴歯の型.
  • マミラ mamilla:細胞が乳房状に膨れた状態.
  • マルスピウム marsupium:苔類の雌花序をとりまく小袋状の構造であり,卵の受精後に大きく発達するもの.ペリギニウムperigyniumとも呼ばれる.
  • 耳状部 auricles, auriculate:葉の基部両端の部分で耳状に拡張した部分.Calyptothecium, Plagiothecium denticulatum, Bryhnia trichomitria
  • 無性芽 gemma:配偶体の茎,葉,仮根,原糸体上に形成される栄養繁殖器官で,形態は単細胞,多細胞で,球形,糸状,金平糖状,ひも上,盤状,葉状など多様.
  • 毛尖 hair point:毛状にとがった葉先の状態で,しばしば透明にある.中肋が突出するばあいと葉身が伸びだすばあいがある.

  • 雄包葉 perigonial leaf:造精器を取り巻く葉で,普通葉にくらべて小さく,広卵形で,凹む.中部〜基部の細胞は薄壁となり,半透明で大型.
  • 雄器托 antheridiophore:造精器をつけるために特殊化した苔類のゼニゴケ類の葉状体部分.造精器をつける盤状の部分(雄器床)と柄(雄器柄)からなる.
  • 油体 oil body:苔類の細胞にみられる粒状構造.形や数は種の特徴となる.精油成分を含む.
  • 葉状体 thallus:茎と葉の区別がない植物の体制.
  • 葉状の thallose:茎と葉の区別のない植物体の状態を指す.
  • 翼細胞(よくさいぼう)alar cells:葉の基部の両端部分にその周辺の細胞とは著しく形と大きさの異なる細胞(→wings; leaf angles翼);カガミゴケ属,ツヤゴケ属
  • 翼細胞 angular cells:翼細胞alar cells.
  • 葉身 lamina:葉の部分のうち広がった部分だけを指す語で,葉柄や葉鞘sheathing baseを除いた部分.しかし,蘚苔類では葉柄が発達しないのでふつう中肋をのぞいた葉の部分を指す.スギゴケ属などのように葉鞘をもつ葉では葉鞘を除いた部分を指す語としてlimbを用いる(Watson 1968).

  • レトルト細胞 retort cells:ミズゴケ類の茎の表皮細胞にみられるフラスコ状の細胞で,口は茎の表面と並行に開く.

  • 矮雄(わいゆう) dwarf male:雌雄異株のコケで,雌植物のからだの上に付着し,雌株に比べて著しく小型化した雄植物.

Reference;

参考文献

  • Magill, R.E. (ed.) 1990. Glossarium Polyglottum Bryologiae. A multilingual glossary for bryology. 297 pp., Missouri Bot. Garden, St. Louis.
  • 尼川大録 1961. コケ植物用語集.生物福岡 1: 54-58.

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