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[[ファイル:ニホンイシガメ雌雄の比較_東広島市椋梨川水系_池田作成_IMG_8652_9652.JPG|200px|thumb|right|ニホンイシガメの雌雄の比較.尻尾をまっすぐ伸ばした際に,オス(写真左)の総排泄腔は甲羅の縁より外側に出るが,メス(写真右)のものは甲羅の縁より外側には出ない.(広島県東広島市椋梨川水系; 撮影: 池田誠慈, オスはApr. 22, 2016. メスはMar. 30, 2016)]]
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[[ファイル: 20190510ニホンイシガメ幼体_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_50616s.jpg|200px|thumb|right|ニホンイシガメの幼体.甲板の数からおよそ2歳だと推測される.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, May. 10, 2019)]]
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[[ファイル:20180430ニホンイシガメ幼体_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_9254s.JPG|200px|thumb|right|ニホンイシガメ幼体.甲羅が銭のように円い.古くは本種の幼体を指して「銭亀(ぜにがめ)」と呼んでいた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 30, 2018)]]
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== 分類 ==
 
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> ニホンイシガメ ''Mauremys japonica''
 
> ニホンイシガメ ''Mauremys japonica''
  
== 解説 ==
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==解説==
* 本州・四国・九州・佐渡島・隠岐・見島・対馬・壱岐・淡路島・五島列島などに分布する日本固有種.
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*本州・四国・九州・佐渡島・隠岐・見島・対馬・壱岐・淡路島・五島列島などに分布する日本固有種.
* 幼体は背甲に3本の隆条(キール)をもつが,成体になると目立たなくなり,中央の1本が不明瞭に残るのみ.背甲の後縁は鋸歯状.
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*幼体は背甲に3本の隆条(キール)をもつが,成体になると目立たなくなり,中央の1本が不明瞭に残るのみ.背甲の後縁は鋸歯状.
* 背甲は赤か黄色味を帯びた褐色.腹甲は黒色か黒褐色1色で,[[クサガメ]]のように黄色の縁取りは入らない.
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*背甲は赤か黄色味を帯びた褐色.腹甲は黒色か黒褐色1色で,[[クサガメ]]のように黄色の縁取りは入らない.
* 四肢にオレンジ色の模様が入るものも見られる.
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*四肢にオレンジ色の模様が入るものも見られる.
* 平地より山麓部に多く,河川の上流~中流域や池沼に生息する.[[クサガメ]]よりも遊泳能力が高く,流れの速い場所や水温の低い場所には本種が多くみられる.
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*平地より山麓部に多く,河川の上流~中流域や池沼に生息する.[[クサガメ]]よりも遊泳能力が高く,流れの速い場所や水温の低い場所には本種が多くみられる.
* オスの尾はメスに比べて長くて基部が太く,尾を伸ばすと総排泄腔が甲羅の外側にくる.メスはオスよりも大きい.
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*オスの尾はメスに比べて長くて基部が太く,尾を伸ばすと総排泄腔が甲羅の外側にくる.メスはオスよりも大きい.
* 雑食性で,水生昆虫や魚,甲殻類を食べる.
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*雑食性で,水生昆虫や魚,甲殻類を食べる.
* ミトコンドリアDNAの解析によると2系統が認められる.本州・四国に分布する系統と本州・九州に分布する系統で,それらは広島県と島根県付近で混在しており,中国地方は境界領域になっていると思われる.
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*ミトコンドリアDNAの解析によると2系統が認められる.本州・四国に分布する系統と本州・九州に分布する系統で,それらは広島県と島根県付近で混在しており,中国地方は境界領域になっていると思われる.
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*ワシントン条約附属書IIに記載されており(CITES II),日本国外への輸出が禁止されている.
  
== 天然記念物・RDB ==
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==天然記念物・RDB==
* 環境省RDB:準絶滅危惧 (NT)
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*環境省RDB:準絶滅危惧 (NT)
* 広島県RDB(2011):準絶滅危惧 (NT)
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*広島県RDB(2011):準絶滅危惧 (NT)
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*ワシントン条約附属書II(CITES Appendix II 2013)
  
 
== 慣用名・英名・広島県方言 ==
 
== 慣用名・英名・広島県方言 ==
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=== 広島県方言 ===
 
=== 広島県方言 ===
* ぜにがめ(幼体のことを指してこう呼んでいた.現在はクサガメの幼体を指すことが多い.)
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* ぜにがめ(幼体のことを指してこう呼んでいた.現在は[[クサガメ]]の幼体を指すことが多い.)
  
 
== 備考 ==
 
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* [[広島県の爬虫類]]
 
* [[広島県の爬虫類]]
  
== 文献(引用) ==
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== 参考文献 ==
* 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島. ISBN 978-4885172298.
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* 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島.
* 千石正一. 1979. イシガメ. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 5. 家の光協会, 東京.
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* 千石正一. 1979. イシガメ. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 5. 家の光協会, 東京.
 
* 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 214 pp. 保育社, 大阪.
 
* 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 214 pp. 保育社, 大阪.
* 鈴木 大. 2012. 遺伝的変異から見たニホンイシガメの進化史と日本産クサガメの外来性について. クリーパー '''61''': 47-57.
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* 鈴木 大. 2012. 遺伝的変異から見たニホンイシガメの進化史と日本産クサガメの外来性について. クリーパー 61: 47-57.
* 安川雄一郎. 1996. ニホンイシガメ. 日本動物大百科 '''5''', pp. 59, 63. 平凡社, 東京.
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* 安川雄一郎. 1996. ニホンイシガメ. 日本動物大百科 5, pp. 59, 63. 平凡社, 東京.
* 安川雄一郎. 2007. イシガメ属とその近縁属の分類と自然史(後編). クリーパー '''40''': 11-12, 35, 36-41.
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* 安川雄一郎. 2007. イシガメ属とその近縁属の分類と自然史(後編). クリーパー 40: 11-12, 35, 36-41.
  
 
== 更新履歴 ==
 
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* 2015.07.23 ページ作成.
 
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2020年8月7日 (金) 15:04時点における版

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ニホンイシガメ成体.頭部はオリーブ色.甲羅は黄褐色で後縁にはノコギリ状の深い切れ込み(鋸歯)があるのが特徴.四肢にオレンジ色の模様が入る.(広島県山県郡芸北町(現在の広島県山県郡北広島町); 撮影: 内藤順一, Sep. 6, 1992)
ニホンイシガメ成体(広島県東広島市椋梨川水系; 撮影: 池田誠慈, Mar. 30, 2016)
日光浴するニホンイシガメ.頭部はあまり大きくなく,背甲の隆条は目立たず,後縁に鋸歯がある.この写真では分かりにくいが,四肢にオレンジ色の模様が入っている.(広島県三原市; 撮影: 池田誠慈, Jun. 11, 2015)
日光浴するニホンイシガメ成体.頭部はあまり大きくなく,背甲の隆条は目立たない.(広島県三原市沼田東町; 撮影: 池田誠慈, Jun. 13, 2015)
日光浴するニホンイシガメ成体(広島県三原市; 撮影: 池田誠慈, Sep. 5, 2016)
ニホンイシガメ(成体).(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, May. 2, 2020)
倒木の上で日光浴をするニホンイシガメの成体.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Sep. 28, 2018)
ニホンイシガメの背甲(左)と腹甲(右).背甲は黄褐色で後縁にはノコギリ状の深い切れ込み(鋸歯)がある.腹甲は模様がなく黒色.(広島県東広島市椋梨川水系; 撮影: 池田誠慈, Apr. 22, 2016)
ニホンイシガメの雌雄の比較.尻尾をまっすぐ伸ばした際に,オス(写真左)の総排泄腔は甲羅の縁より外側に出るが,メス(写真右)のものは甲羅の縁より外側には出ない.(広島県東広島市椋梨川水系; 撮影: 池田誠慈, オスはApr. 22, 2016. メスはMar. 30, 2016)
ニホンイシガメ幼体(広島県三原市; 撮影: 池田誠慈, May 9, 2015)
ニホンイシガメの幼体.甲板の数からおよそ2歳だと推測される.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, May. 10, 2019)
ニホンイシガメ幼体.甲羅が銭のように円い.古くは本種の幼体を指して「銭亀(ぜにがめ)」と呼んでいた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 30, 2018)

ニホンイシガメ Mauremys japonica

分類

動物界 Animalia > 脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 爬虫綱 Reptilia Linnaeus > カメ目 Testudines > イシガメ科 Geoemydidae > イシガメ属 Mauremys > ニホンイシガメ Mauremys japonica

解説

  • 本州・四国・九州・佐渡島・隠岐・見島・対馬・壱岐・淡路島・五島列島などに分布する日本固有種.
  • 幼体は背甲に3本の隆条(キール)をもつが,成体になると目立たなくなり,中央の1本が不明瞭に残るのみ.背甲の後縁は鋸歯状.
  • 背甲は赤か黄色味を帯びた褐色.腹甲は黒色か黒褐色1色で,クサガメのように黄色の縁取りは入らない.
  • 四肢にオレンジ色の模様が入るものも見られる.
  • 平地より山麓部に多く,河川の上流~中流域や池沼に生息する.クサガメよりも遊泳能力が高く,流れの速い場所や水温の低い場所には本種が多くみられる.
  • オスの尾はメスに比べて長くて基部が太く,尾を伸ばすと総排泄腔が甲羅の外側にくる.メスはオスよりも大きい.
  • 雑食性で,水生昆虫や魚,甲殻類を食べる.
  • ミトコンドリアDNAの解析によると2系統が認められる.本州・四国に分布する系統と本州・九州に分布する系統で,それらは広島県と島根県付近で混在しており,中国地方は境界領域になっていると思われる.
  • ワシントン条約附属書IIに記載されており(CITES II),日本国外への輸出が禁止されている.

天然記念物・RDB

  • 環境省RDB:準絶滅危惧 (NT)
  • 広島県RDB(2011):準絶滅危惧 (NT)
  • ワシントン条約附属書II(CITES Appendix II 2013)

慣用名・英名・広島県方言

慣用名

  • イシガメ

英名

  • Japanese pond turtle

広島県方言

  • ぜにがめ(幼体のことを指してこう呼んでいた.現在はクサガメの幼体を指すことが多い.)

備考

参考文献

  • 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島.
  • 千石正一. 1979. イシガメ. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 5. 家の光協会, 東京.
  • 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 214 pp. 保育社, 大阪.
  • 鈴木 大. 2012. 遺伝的変異から見たニホンイシガメの進化史と日本産クサガメの外来性について. クリーパー 61: 47-57.
  • 安川雄一郎. 1996. ニホンイシガメ. 日本動物大百科 5, pp. 59, 63. 平凡社, 東京.
  • 安川雄一郎. 2007. イシガメ属とその近縁属の分類と自然史(後編). クリーパー 40: 11-12, 35, 36-41.

更新履歴

  • 2015.07.23 ページ作成.

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