「ニホンヒキガエル」の版間の差分

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[[ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3651.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)]]
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[[ファイル: 20200608ニホンヒキガエル成体メス_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_126496s.jpg|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの成体(メス).(発見者:吉野僚)(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jun. 8, 2020)]]
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[[ファイル:20170130ニホンヒキガエル成体_東広島市鏡山_神林撮影_IMG_4577.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの抱接.多数の個体が集まって産卵する様子は「蛙合戦(かわずがっせん)」と呼ばれてきた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 神林千晶, Jan. 30, 2017)]]
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= ニホンヒキガエル ''Bufo japonicus japonicus'' =
 
= ニホンヒキガエル ''Bufo japonicus japonicus'' =
 
== 分類 ==
 
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> 両生綱 Amphibia
 
> 両生綱 Amphibia
 
> 無尾目 Anura
 
> 無尾目 Anura
> ナミガエル亜目 Neobatrachia
 
 
> ヒキガエル科 Bufonidae
 
> ヒキガエル科 Bufonidae
 
> ヒキガエル属 ''Bufo''
 
> ヒキガエル属 ''Bufo''
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> ニホンヒキガエル(種)ニホンヒキガエル ''Bufo japonicus''
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> ニホンヒキガエル(亜種) ''Bufo japonicus japonicus''
  
 
== 解説 ==
 
== 解説 ==
*鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有亜種.
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* 鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有亜種.
*広島県の山間部と一部の島嶼に分布.
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* 広島県の山間部と一部の島嶼に分布.
*宮島島内,要調査.
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* 宮島島内にも生息するが,詳細は要調査.
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* 鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ.
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* 耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.
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* 飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い.
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* オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い.
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* 雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.
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* オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた.
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* 沿岸部では2月中旬頃より,中部から県北にかけては3~4月頃,池や湿地,山地の水たまりなどの止水域にひも状の卵のうを産む.
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* 卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する.
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* 幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ.
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* 変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する.
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* 繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する.
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* 広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである.
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== 天然記念物・RDB ==
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* 広島県RDBカテゴリ(2011):絶滅危惧II類 (VU)
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* 「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧
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== 慣用名・英名・広島県方言 ==
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=== 慣用名 ===
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=== 英名 ===
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* Japanese common toad
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=== 広島県方言 ===
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* がま
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* がまがえる
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* ひき
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* どんびき
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* ひこはち
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==ギャラリー==
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ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)頭部側面山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3664.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)の頭部側面.鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ(白両矢印).耳腺(白矢印)や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
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ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)前腕山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3659.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス).オスの前腕はメスに比べ頑強で太い.オスの吻端は突出することが多い.雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
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ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)婚姻瘤山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3658.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルのオスは前肢第1指と第2指,しばしば第3指に黒色の顆粒からなる婚姻瘤(白矢印)をもつ.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
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ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)腹面山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3662.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)の腹面.白地にだんだらの黒色斑紋があるが,変異に富む.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
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ファイル:20150412ニホンヒキガエル幼生_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_0532.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ).群れになって水中を漂うように泳ぐ.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 12, 2015)
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ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生背面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9213.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の背面.全体が黒色.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016)
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ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生側面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9210.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の側面.全体が黒色.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016)
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ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生腹面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9193.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の腹面.腹面も黒いことで他種と区別できる.内臓はかすかに透けて見える程度.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016)
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ファイル:20190301ニホンヒキガエル卵塊_東広島市_池田撮影_IMG_37217s.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの卵塊.ひも状の卵塊の中に多数の卵が見える.(広島県東広島市; 撮影: 池田誠慈, Mar. 1, 2019)
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ファイル:20160612ニホンヒキガエル亜成体_広島県北部_池田撮影_IMG_11534.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル亜成体(広島県北部; 撮影: 池田誠慈, Jun. 12, 2016)
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ファイル:20160612ニホンヒキガエル亜成体_広島県北部_池田撮影_IMG_11540.JPG|200px|thumb|right|正面から見たニホンヒキガエル亜成体(広島県北部; 撮影: 池田誠慈, Jun. 12, 2016)
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ファイル: 20200916ニホンヒキガエル_広島県廿日市市吉和_中西撮影_DSC_0009s.JPG|200px|thumb|right|赤色の斑点がある亜成体.(広島県廿日市市吉和; 撮影: 中西健介, Sep. 16, 2020)
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ファイル:20190801ニホンヒキガエル幼体_廿日市市北部_池田撮影_IMG_47078s.JPG|200px|thumb|right|約2 cmまで成長したニホンヒキガエルの幼体(広島県廿日市市北部; 撮影: 池田誠慈, Aug. 1, 2019)
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== 備考 ==
 
== 備考 ==
 
* [[広島県のカエル]]
 
* [[広島県のカエル]]
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* [[宮島のカエル|宮島に生息するカエル]]
  
== 参考文献(出典) ==
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== 参考文献 ==
*前田憲男・松井正文 『改訂版 日本カエル図鑑』 文一総合出版,1999年.ISBN 978-4829921302.
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* 比婆科学教育振興会(編).  1996.  広島県の両生・爬虫類.  168 pp.  中国新聞社, 広島.
*内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎 『決定版 日本の両生爬虫類』 平凡社,2002年.ISBN 4-582-54232-8.
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* 前田憲男・松井正文.  1999.  改訂版 日本カエル図鑑.  233 pp.  文一総合出版, 東京.
*比婆科学教育振興会編集 『広島県の両生・爬虫類』 中国新聞社,1996.ISBN 978-4885172298.
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* 松井正文.  1979.  ニホンヒキガエル.  千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 126.  家の光協会, 東京.
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==更新履歴==
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*2021.02.25 環境省RDBカテゴリに誤記載があり,修正しました.また,沿岸部での産卵期の情報提供を受け,解説を編集しました.
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[[Category:動物]]
 
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[[Category:無尾目]]
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[[Category:Bufonidae]]
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[[Category:広島県]]
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[[Category:宮島]]
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[[Category:標準和名]]
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[[Category:RDB]]

2021年2月25日 (木) 20:43時点における版

広島大学 > デジタル自然史博物館 > メインページ > 郷土の動物 > 広島県のカエル > ニホンヒキガエル | 広島県の動物図鑑 / 和名順

ニホンヒキガエル(オス)(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
ニホンヒキガエルの成体(メス).(発見者:吉野僚)(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jun. 8, 2020)
ニホンヒキガエルの抱接.多数の個体が集まって産卵する様子は「蛙合戦(かわずがっせん)」と呼ばれてきた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 神林千晶, Jan. 30, 2017)

ニホンヒキガエル Bufo japonicus japonicus

分類

脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 両生綱 Amphibia > 無尾目 Anura > ヒキガエル科 Bufonidae > ヒキガエル属 Bufo > ニホンヒキガエル(種)ニホンヒキガエル Bufo japonicus > ニホンヒキガエル(亜種) Bufo japonicus japonicus

解説

  • 鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有亜種.
  • 広島県の山間部と一部の島嶼に分布.
  • 宮島島内にも生息するが,詳細は要調査.
  • 鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ.
  • 耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.
  • 飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い.
  • オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い.
  • 雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.
  • オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた.
  • 沿岸部では2月中旬頃より,中部から県北にかけては3~4月頃,池や湿地,山地の水たまりなどの止水域にひも状の卵のうを産む.
  • 卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する.
  • 幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ.
  • 変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する.
  • 繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する.
  • 広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである.

天然記念物・RDB

  • 広島県RDBカテゴリ(2011):絶滅危惧II類 (VU)
  • 「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧

慣用名・英名・広島県方言

慣用名

英名

  • Japanese common toad

広島県方言

  • がま
  • がまがえる
  • ひき
  • どんびき
  • ひこはち

ギャラリー

備考

参考文献

  • 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島.
  • 前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 233 pp. 文一総合出版, 東京.
  • 松井正文. 1979. ニホンヒキガエル. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 126. 家の光協会, 東京.

更新履歴

  • 2021.02.25 環境省RDBカテゴリに誤記載があり,修正しました.また,沿岸部での産卵期の情報提供を受け,解説を編集しました.

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