ハマゴウ
提供: 広島大学デジタル博物館
ナビゲーションに移動検索に移動ハマゴウ Vitex rotundifolia L.fil.
クマツヅラ科 Verbenaceae
ハマゴウ属 Vitex
解説
暖地の日当たりの良い砂浜などの砂礫地に生育する小低木.茎は這い,高さ約10-30 cm程度.葉は対生につき,やや肉厚で柔らかく,長さ3-4 cm程度の楕円形-広卵形.葉の表面はやや白みを帯びた緑色で,裏面は灰白色の短毛が密生する.一般的に常緑と記述されるが,広島県では落葉するのが一般的.花は唇花で円錐花序.花弁は青紫色で,中程に白色の部分がある.精油分を含み,花を含めた植物体全体に芳香がある.花期は7-9月.宮島では8月上旬が一般的.果実は球形で,直径5 mm程度,秋に黒く成熟する.
東北地方南部以南の本州から四国,九州,沖縄まで自生し,東アジアから東南アジア,オーストラリアまで広く分布する.砂礫地の海岸に自生する海浜植物の一種であるが,淡水の琵琶湖にも生育する.琉球列島以南には,三出複葉で,幹が立ち上がり,花がやや小降りのものがあり,ミツバハマゴウと呼ばれる.
ハマゴウは海岸の砂礫地に根を張り,幹枝をはるため,暴風時に海岸の砂浜の流出を防ぐ役割もある.近年,海岸の開発の影響で,ハマゴウの群落が激減している.
果実は蔓荊子(マンケイシ),茎葉は蔓荊葉(まんけいよう)と呼ばれる生薬.漢方では滋養強壮,鎮痛,鎮静,解熱,消炎作用をもつとされる.浴湯料として用いられる場合もある.
和名の由来は,植物体全体に芳香があるため.枕元に置くと安眠できるなど,古くから香として用いられていたことから「浜香」と呼ばれ,これが転じたとされる.また,「浜未浜比(はまはひ)」「浜這」が転訛したともされる.
属名Vitexは,カゴを編んだことから,結ぶという意味のvieoに由来.種小名のrotundifoliaは円形の葉の意味.
慣用名
- ハマゴオ
備考
- 環境庁コード: 47960
文献(出典)
- 広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(編). 1997. 広島県植物誌. Pp. 832. 中国新聞社, 広島.