「小さな植物 宮島の植物と自然」の版間の差分
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小さな植物
視線を低くしてみよう
視線を低くすると,普段はあまり気が付かない小さな植物もたくさん生育していることに気が付きます.例えば,コケ植物や地衣類,藻類などが小さな植物の代表です.これらの植物は,小さいながらも,宮島の自然の重要な構成員です.
コケという言葉は,もともと小さい植物全体をさす言葉であったため,現在の分類学的な知識で考えるとコケ植物だけでなく,地衣類や小型のシダやその他の維管束植物(いかんそくしょくぶつ)なども含まれています.
コケ植物
コケ植物は,胞子(ほうし)で増える植物のひとつです.立派な花は咲かせませんが,ルーペで観察すると美しいものです.コケ植物は大きく分けて3つの仲間があり,それぞれ蘚類(せんるい),苔類(たいるい),ツノゴケ類と呼ばれます.蘚類と苔類の種数を比べた場合,一般的に北に行くほど蘚類の占める割合が,南に行くほど苔類の占める割合が大きくなっていきます.宮島はちょうど中間くらいの値になります.また,ツノゴケ類は種数が少なく,とくに農業が営まれていない宮島ではあまり見られません.
日本は気候が湿潤(しつじゅん)なので多くのコケ植物が見られます.日本では約1800種が報告されています.また,シカはコケ植物には食害をほとんど与えないため,宮島でも多くの種が観察できます.例えば,大元公園では,地上にはハイゴケ Hypnum plumaeforme Wilson,エゾスナゴケ Racomitrium japonicum (Dozy & Molk.) Dozy & Molk. などの蘚類が見られます.また,樹上にはコモチイトゴケ Pylaisiadelpha tenuirostris (Bruch & Schimp.) W.R.Buck などの蘚類が見られます.
一般に,コケ植物は湿度の高い日陰(ひかげ)に生育するものと思われがちですが,植物なので生育には光が必要です.落ち葉などが覆 おおって日陰となり,光が当たらなくなると枯れてしまいます.そのため,苔庭(こけにわ)などでは,落ち葉を定期的に取り除いてやるなどの手入れが必要になります.ただし,宮島の大元公園やその他の場所では,手入れのしすぎでコケがはがれてしまったところがあるので,現在はコケをいためないよう注意して管理されています.
地衣類
地衣類も「~コケ」という和名(わめい)のものが多いのですが,コケ植物とはまったく異なる生き物です.地衣類は,カビやキノコなどの菌類(きんるい)と藻類が共生した生物です.地衣類の本体は菌類の菌糸(きんし)が絡(から)み合ってできたもので,その中に藻類が共生しているため緑色に見えます.スミレモモドキなどでは共生藻がスミレモ類なので,オレンジ色に見えます.ウメノキゴケ Parmotrema tinctorum (Nyl.) Hale のようにコケ植物と同じように木に着生する種もありますが,コケ植物ではなく地衣類です.地衣類が多いところにはコケ植物が着生しにくい傾向があります.また,大気汚染の指標(しひょう)植物として利用されます.
種名 | 冊子中のページ数 |
---|---|
オオミズゴケ | 124-125 pp. |
スミレモ類 | 126-127 pp. |
「宮島の植物と自然」内のページ
「宮島の植物と自然」(広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所 2009)内で掲載されているページ.
- 122-123 pp.
文献(引用)
広島大学 > デジタル自然史博物館 > 宮島の植物と自然 > 目次 > 小さな植物