宮島の自然 宮島の植物と自然

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宮島の自然

貴重な宮島の自然

 宮島は豊かな自然が残されています.宮島は島であるため,周りの自然から隔離(かくり)された環境になっています.また,昔から,島全体が社寺林(しゃじりん)のように大切にあつかわれてきました.今日でも,多くの法律で保護されています.このため,外部,とくに人間の影響をあまり受けない状態の自然が残っています.このような自然は,日本にはあまり残っていないため,宮島の自然は貴重なのです.宮島には多くの植物が見られます.これまでに約700 種の維管束植物(いかんそくしょくぶつ)が記録され,この小さな島だけで広島県で見られる維管束植物の約1/3が存在します.宮島だけにしかないという植物は存在しませんが,広島県では宮島でしか記録されていない植物や,植物分類学上あるいは植物地理学(しょくぶつちりがく)上貴重な植物も少なくありません.

  • 宮島は「植物の正倉院(しょうそういん)」と呼ばれることがありますが,もとは広島県帝釈峡(たいしゃくきょう)周辺を指した言葉.帝釈峡が中国・朝鮮半島からつながる生物の分布の東端にあたる場合が多いことから.シルクロードを通って日本に来た文化の終着点(東端)が正倉院であることになぞらえたもの.(関 太郎 広島大学名誉教授 談)

貴重な宮島の生態系

 宮島には,海から山頂まで,連続した生態系が残っています.海のそばには自然のままの砂浜があります.砂浜にはハマゴウなどの海浜植生(かいひんしょくせい)があります.さらにその上には,自然のままの森林があります.瀬戸内海(せとないかい)周辺では多くの海岸が埋め立てられたり,低地では人が自然植生を破壊しているため,生態系が分断されています.広い範囲の環境がきちんと守られ,連続した生態系が見られる点でも,宮島は貴重です.

宮島の自然とその周りの自然

 宮島の自然は,周りの自然とはかなり様子が違います.しかし,宮島の自然は,本来,宮島以外の瀬戸内海の島にも存在しても良いものです.周りの自然は,人間の利用によりすっかり変わってしまいました.周りの自然が変わってしまったため,宮島の自然が変わっているように見えるだけで,宮島の自然だけが元の姿のまま取り残されているのです.

人類共通の遺産としての宮島

 宮島は1996(平成8)年12 月7 日,人類が共有し後世に残すべき貴重な財産であるとして,ユネスコ(UNESCO)の世界遺産(せかいいさん)リストに文化遺産として登録されました.世界遺産のコアエリア(核心地域)は,厳島神社(いつくしまじんじゃ)と人の影響から逃れ豊かな自然を残している瀰山原始林(みせんげんしりん)ですが,その地域を除く宮島全島がそのバッファゾーン(緩衝地帯(かんしょうちたい))に指定され,全島が守られています.世界遺産の他にも,瀬戸内海国立公園や国指定特別史跡「厳島」,国指定特別名勝「厳島」,国の天然記念物「瀰山原始林」など,宮島はさまざまな法の網(あみ)で守られています.

「宮島の植物と自然」内のページ

「宮島の植物と自然」(広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所 2009)内で掲載されているページ.

  • 8-9 pp.

文献(引用)



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