「ニホンヒキガエル」の版間の差分
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− | + | =ニホンヒキガエル ''Bufo japonicus''= | |
− | = ニホンヒキガエル ''Bufo | + | ==分類== |
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> ヒキガエル属 ''Bufo'' | > ヒキガエル属 ''Bufo'' | ||
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− | == 解説 == | + | ==解説== |
− | * | + | *鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有種. |
− | * 広島県の山間部と一部の島嶼に分布. | + | *広島県の山間部と一部の島嶼に分布. |
− | * 宮島島内にも生息するが,詳細は要調査. | + | *宮島島内にも生息するが,詳細は要調査. |
− | * 鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ. | + | *鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ. |
− | * 耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す. | + | *耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す. |
− | * 飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い. | + | *飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い. |
− | * オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い. | + | *オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い. |
− | * 雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない. | + | *雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない. |
− | * オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた. | + | *オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた. |
− | * | + | *沿岸部では2月中旬頃より,中部から県北にかけては3~4月頃,池や湿地,山地の水たまりなどの止水域にひも状の卵のうを産む. |
− | * 卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する. | + | *卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する. |
− | * 幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ. | + | *幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ. |
− | * 変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する. | + | *変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する. |
− | * 繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する. | + | *繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する. |
− | * 広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである. | + | *広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである. |
+ | *沿岸部では,数地点でしか産卵が確認されておらず,最も絶滅の危険性の高いカエルと思われる.県中部以北に分布するから大丈夫だと考えるのではなく,多様性保全の観点から沿岸部の個体群も守っていかねばならない. | ||
− | == 天然記念物・RDB == | + | ==天然記念物・RDB== |
− | * | + | *環境省RDBカテゴリ:該当なし |
− | * | + | *広島県RDBカテゴリ(2003):絶滅危惧II類(VU) |
− | * 「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧 | + | *広島県RDBカテゴリ(2011):絶滅危惧II類(VU) |
+ | *広島県RDBカテゴリ(2021):絶滅危惧II類(VU) | ||
+ | *「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧 | ||
− | == 慣用名・英名・広島県方言 == | + | ==慣用名・英名・広島県方言== |
− | === 慣用名 === | + | ===慣用名=== |
− | === 英名 === | + | ===英名=== |
− | * Japanese common toad | + | *Japanese common toad |
− | === 広島県方言 === | + | ===広島県方言=== |
− | * がま | + | *がま |
− | * がまがえる | + | *がまがえる |
− | * ひき | + | *ひき |
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− | * ひこはち | + | *ひこはち |
− | == | + | ==ギャラリー== |
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− | + | ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)頭部側面山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3664.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)の頭部側面.鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ(白両矢印).耳腺(白矢印)や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015) | |
+ | ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)前腕山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3659.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス).オスの前腕はメスに比べ頑強で太い.オスの吻端は突出することが多い.雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015) | ||
+ | ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)婚姻瘤山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3658.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルのオスは前肢第1指と第2指,しばしば第3指に黒色の顆粒からなる婚姻瘤(白矢印)をもつ.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015) | ||
+ | ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)腹面山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3662.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)の腹面.白地にだんだらの黒色斑紋があるが,変異に富む.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015) | ||
+ | ファイル:20150412ニホンヒキガエル幼生_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_0532.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ).群れになって水中を漂うように泳ぐ.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 12, 2015) | ||
+ | ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生背面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9213.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の背面.全体が黒色.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016) | ||
+ | ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生側面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9210.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の側面.全体が黒色.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016) | ||
+ | ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生腹面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9193.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の腹面.腹面も黒いことで他種と区別できる.内臓はかすかに透けて見える程度.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016) | ||
+ | ファイル:20190301ニホンヒキガエル卵塊_東広島市_池田撮影_IMG_37217s.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの卵塊.ひも状の卵塊の中に多数の卵が見える.(広島県東広島市; 撮影: 池田誠慈, Mar. 1, 2019) | ||
+ | ファイル:20160612ニホンヒキガエル亜成体_広島県北部_池田撮影_IMG_11534.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル亜成体(広島県北部; 撮影: 池田誠慈, Jun. 12, 2016) | ||
+ | ファイル:20160612ニホンヒキガエル亜成体_広島県北部_池田撮影_IMG_11540.JPG|200px|thumb|right|正面から見たニホンヒキガエル亜成体(広島県北部; 撮影: 池田誠慈, Jun. 12, 2016) | ||
+ | ファイル: 20200916ニホンヒキガエル_広島県廿日市市吉和_中西撮影_DSC_0009s.JPG|200px|thumb|right|赤色の斑点がある亜成体.(広島県廿日市市吉和; 撮影: 中西健介, Sep. 16, 2020) | ||
+ | ファイル:20190801ニホンヒキガエル幼体_廿日市市北部_池田撮影_IMG_47078s.JPG|200px|thumb|right|約2 cmまで成長したニホンヒキガエルの幼体(広島県廿日市市北部; 撮影: 池田誠慈, Aug. 1, 2019) | ||
+ | </gallery> | ||
+ | ==備考== | ||
+ | *[[広島県のカエル]] | ||
+ | *[[宮島のカエル|宮島に生息するカエル]] | ||
+ | *[[ニホンヒキガエル_広島大学東広島キャンパス|広島大学東広島キャンパスのニホンヒキガエル]] | ||
+ | ==参考文献== | ||
+ | *比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島. | ||
+ | *前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 233 pp. 文一総合出版, 東京. | ||
+ | *松井正文. 1979. ニホンヒキガエル. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 126. 家の光協会, 東京. | ||
− | == | + | ==更新履歴== |
− | * | + | *2021.02.25 環境省RDBカテゴリに誤記載があり,修正しました.また,沿岸部での産卵期の情報提供を受け,解説を編集しました. |
− | + | *2024.04.01 亜種から種に昇格されたことを受け,ページを更新しました. | |
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+ | [https://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html 広島大学] > [https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/ 広島大学デジタルミュージアム] > [https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/~museum/ デジタル自然史博物館] > [[動物総合ページ]] > [[郷土の動物|郷土の動物]] > [[広島県の両生類]] > [[ニホンヒキガエル]] | [[広島県の動物図鑑]] / [[広島県の動物図鑑/和名順/ブロック|和名順]] | ||
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ニホンヒキガエル Bufo japonicus
分類
脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 両生綱 Amphibia > 無尾目 Anura > ヒキガエル科 Bufonidae > ヒキガエル属 Bufo > ニホンヒキガエル Bufo japonicus
解説
- 鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有種.
- 広島県の山間部と一部の島嶼に分布.
- 宮島島内にも生息するが,詳細は要調査.
- 鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ.
- 耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.
- 飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い.
- オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い.
- 雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.
- オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた.
- 沿岸部では2月中旬頃より,中部から県北にかけては3~4月頃,池や湿地,山地の水たまりなどの止水域にひも状の卵のうを産む.
- 卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する.
- 幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ.
- 変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する.
- 繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する.
- 広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである.
- 沿岸部では,数地点でしか産卵が確認されておらず,最も絶滅の危険性の高いカエルと思われる.県中部以北に分布するから大丈夫だと考えるのではなく,多様性保全の観点から沿岸部の個体群も守っていかねばならない.
天然記念物・RDB
- 環境省RDBカテゴリ:該当なし
- 広島県RDBカテゴリ(2003):絶滅危惧II類(VU)
- 広島県RDBカテゴリ(2011):絶滅危惧II類(VU)
- 広島県RDBカテゴリ(2021):絶滅危惧II類(VU)
- 「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧
慣用名・英名・広島県方言
慣用名
英名
- Japanese common toad
広島県方言
- がま
- がまがえる
- ひき
- どんびき
- ひこはち
ギャラリー
備考
参考文献
- 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島.
- 前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 233 pp. 文一総合出版, 東京.
- 松井正文. 1979. ニホンヒキガエル. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 126. 家の光協会, 東京.
更新履歴
- 2021.02.25 環境省RDBカテゴリに誤記載があり,修正しました.また,沿岸部での産卵期の情報提供を受け,解説を編集しました.
- 2024.04.01 亜種から種に昇格されたことを受け,ページを更新しました.
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