「ニホンアカガエル」の版間の差分
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+ | [[ファイル: 20200123ニホンアカガエル_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_102138s.jpg|250px|thumb|right|多数のニホンアカガエルのオスが一匹のメスをめぐって争う様子.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jan. 23, 2020)]] | ||
+ | [[ファイル: 20200122ニホンアカガエル_東広島市鏡山_柳撮影_22819s.jpg|250px|thumb|right|産卵・放精中のニホンアカガエル.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 柳拓明, Jan. 22, 2020)]] | ||
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> ニホンアカガエル ''Rana japonica'' | > ニホンアカガエル ''Rana japonica'' | ||
− | == 解説 == | + | ==解説== |
− | * 本州・四国・九州・壱岐・大隅諸島.八丈島には人為移入. | + | *本州・四国・九州・壱岐・大隅諸島.八丈島には人為移入. |
− | * 繁殖期は他の本土産のカエルに比べて早く,広島県内の平地で1~3月,県北で4月頃.オスは「キョッキョッキョッキョッ……」と鳴くが,鳴のうはもたない. | + | *繁殖期は他の本土産のカエルに比べて早く,広島県内の平地で1~3月,県北で4月頃.オスは「キョッキョッキョッキョッ……」と鳴くが,鳴のうはもたない. |
− | * 湿田や湿地などの浅い止水に約500~3000個の卵を産卵する.1個体のメスが産卵する卵はひとかたまりの卵塊としてまとまるので,卵塊の数を数えることでメスの数を推定できる. | + | *湿田や湿地などの浅い止水に約500~3000個の卵を産卵する.1個体のメスが産卵する卵はひとかたまりの卵塊としてまとまるので,卵塊の数を数えることでメスの数を推定できる. |
− | * オスは,前肢の第1指に婚姻瘤(こんいんりゅう)をもつ.また,メスの腹面は,繁殖期に朱色になる. | + | *オスは,前肢の第1指に婚姻瘤(こんいんりゅう)をもつ.また,メスの腹面は,繁殖期に朱色になる. |
− | * [[ヤマアカガエル]]と似るが,本種は背側線が眼の後方から真っ直ぐ伸びることとあごに黒斑がないことで区別できる([[ヤマアカガエル]]の背側線は眼の後方で外側に曲がり,あごに数個のやや大きな黒斑をもつ). | + | *[[ヤマアカガエル]]と似るが,本種は背側線が眼の後方から真っ直ぐ伸びることとあごに黒斑がないことで区別できる([[ヤマアカガエル]]の背側線は眼の後方で外側に曲がり,あごに数個のやや大きな黒斑をもつ). |
− | * [[ヤマアカガエル]]としばしば混生するが,鳴き声が違うのはもとより,本種は平地に,[[ヤマアカガエル]]は山間で見られる傾向があり(交配前隔離),人為的に [[ヤマアカガエル]]と交配させても受精不能か稔性(ねんせい)をもたず(交配後隔離),生殖的に隔離されている. | + | *[[ヤマアカガエル]]としばしば混生するが,鳴き声が違うのはもとより,本種は平地に,[[ヤマアカガエル]]は山間で見られる傾向があり(交配前隔離),人為的に [[ヤマアカガエル]]と交配させても受精不能か稔性(ねんせい)をもたず(交配後隔離),生殖的に隔離されている. |
− | * 幼生は,背中に左右1対の黒点があり,[[ヤマアカガエル]]の幼生と区別できる. | + | *幼生は,背中に左右1対の黒点があり,[[ヤマアカガエル]]の幼生と区別できる. |
− | * 冬~早春に繁殖を行うため,その時期に産卵場所となる浅い止水が必要であるが,圃場整備による乾田化や水田放棄により産卵場所が消失している. | + | *冬~早春に繁殖を行うため,その時期に産卵場所となる浅い止水が必要であるが,圃場整備による乾田化や水田放棄により産卵場所が消失している. |
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− | == | + | ==天然記念物・RDB== |
− | + | *環境省RDB:準絶滅危惧(NT)→選外へ | |
− | * | + | *広島県RDBカテゴリ(2003):準絶滅危惧(NT) |
+ | *広島県RDBカテゴリ(2011):準絶滅危惧(NT) | ||
+ | *広島県RDBカテゴリ(2021):準絶滅危惧(NT) | ||
+ | *「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):環境指標種 | ||
− | === 英名 === | + | ==慣用名・英名・広島県方言== |
+ | ===慣用名=== | ||
+ | *ニホンアカ | ||
+ | ===英名=== | ||
* Japanese brown frog | * Japanese brown frog | ||
+ | ===広島県方言=== | ||
+ | *あかがえる | ||
− | === | + | ==ギャラリー== |
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+ | ファイル:20160316ニホンアカガエル成体オス_三原市高坂町_池田撮影_IMG_8269.JPG|200px|thumb|right|繁殖期のニホンアカガエルの成体(オス).腕はメスに比べ太い.(広島県三原市高坂町; 撮影: 池田誠慈, Mar. 16, 2016) | ||
+ | ファイル:20150719ニホンアカガエル三原市久井町池田撮影IMG_2434.JPG|200px|thumb|right|非繁殖期のニホンアカガエル成体(オス)(広島県三原市久井町; 撮影: 池田誠慈, Jul. 19, 2015) | ||
+ | ファイル:20150719ニホンアカガエル三原市久井町池田撮影IMG_2427.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエル成体(オス).あごに模様はない.オスは前肢第1指に婚姻瘤(こんいんりゅう)をもつ(白矢印).(広島県三原市久井町; 撮影: 池田誠慈, Jul. 19, 2015) | ||
+ | ファイル:20160316ニホンアカガエル婚姻瘤_三原市高坂町_池田撮影_IMG_8271.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエル(オス)の婚姻瘤(こんいんりゅう)(黒矢印).(広島県三原市高坂町; 撮影: 池田誠慈, Mar. 16, 2016) | ||
+ | ファイル:20150719ニホンアカガエル三原市久井町池田撮影IMG_2432.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエル成体(オス)の背側線(白矢印).眼の後方から真っ直ぐ伸びる.(広島県三原市久井町; 撮影: 池田誠慈, Jul. 19, 2015) | ||
+ | ファイル:20150719ニホンアカガエル三原市久井町池田撮影IMG_2435.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエル成体(オス)の背側線(白矢印).眼の後方から真っ直ぐ伸びる.(広島県三原市久井町; 撮影: 池田誠慈, Jul. 19, 2015) | ||
+ | ファイル:20160228ニホンアカガエル成体メス_三原市本郷町_池田撮影_IMG_7816.JPG|200px|thumb|right|抱卵したニホンアカガエルのメス.(広島県三原市本郷町; 撮影: 池田誠慈, Feb. 28, 2016) | ||
+ | ファイル:20160228ニホンアカガエル成体メス腹面_三原市本郷町_池田撮影_IMG_7826.JPG|200px|thumb|right|抱卵しているニホンアカガエル成体(メス).繁殖期のメスの腹面は朱色になる.(広島県三原市本郷町; 撮影: 池田誠慈, Feb. 28, 2016) | ||
+ | ファイル: 20190201ニホンアカガエル成体_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_43074s.jpg|200px|thumb|right|抱接中のニホンアカガエル(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Feb. 1, 2019) | ||
+ | ファイル:20170129ニホンアカガエル成体_東広島市鏡山_神林撮影_IMG_4531.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエルの産卵(広島県東広島市鏡山; 撮影: 神林千晶, Jan. 29, 2017) | ||
+ | ファイル:20170113ニホンアカガエル卵隗_東広島市鏡山_塩路撮影_IMGP0033.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエルの卵隗(広島県東広島市鏡山; 撮影: 塩路恒生, Jan. 13, 2017) | ||
+ | ファイル: 20190124ニホンアカガエル卵塊_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_42914s.jpg|200px|thumb|right|ニホンアカガエルの卵塊.よく見ると受精卵の一つ一つは体細胞分裂によって分割している.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jan. 24, 2019) | ||
+ | ファイル: 20194124ニホンアカガエル卵塊_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_42907s.jpg|200px|thumb|right|ニホンアカガエルの卵塊.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jan. 24, 2019) | ||
+ | ファイル:20170228ニホンアカガエル幼生_広島県東広島市鏡山_神林撮影_IMG_4636.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエル孵化直後幼生(広島県東広島市鏡山; 撮影: 神林千晶, Feb. 28, 2017) | ||
+ | ファイル:20170317ニホンアカガエル幼生_東広島市鏡山_池田撮影_IMG_17761.JPG|200px|thumb|right|ふ化して間もないニホンアカガエルの幼生(オタマジャクシ)(広島県東広島市鏡山; 撮影: 池田誠慈, Mar. 17, 2017) | ||
+ | ファイル:20160415ニホンアカガエル幼生_東広島市鏡山_池田撮影_IMG_9350.JPG|200px|thumb|right|水中のニホンアカガエルの幼生(オタマジャクシ)の背面.尾は比較的短い.背面に1対の点状斑紋がある.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 池田誠慈, Apr. 15, 2016) | ||
+ | ファイル:20160411ニホンアカガエル幼生背面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9223.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエルの幼生(オタマジャクシ)の背面.尾は比較的短い.背面に1対の点状斑紋がある.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016) | ||
+ | ファイル:20160411ニホンアカガエル幼生側面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9250.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエルの幼生(オタマジャクシ)の側面.内臓が透けて見え,尾筋に斑紋があり,尾は短く先細りしない.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016) | ||
+ | ファイル:20160411ニホンアカガエル幼生側面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9231.JPG|200px|thumb|right|水上に出したニホンアカガエルの幼生(オタマジャクシ)の側面.内臓が透けて見え,尾筋に斑紋があり,尾は短く先細りしない.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016) | ||
+ | ファイル:20160411ニホンアカガエル幼生腹面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9234.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエルの幼生(オタマジャクシ)の腹面.成長しても内臓が透けて見える.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016) | ||
+ | ファイル:20180601ニホンアカガエル変態中_東広島市鏡山_池田撮影_IMG_29682s.JPG|200px|thumb|right|変態中のニホンアカガエル(広島大学東広島キャンパス 生態実験園; 撮影: 池田誠慈, Jun. 1, 2018) | ||
+ | ファイル:20160610ニホンアカガエル幼体_東広島市鏡山_池田撮影_IMG_11293.JPG|200px|thumb|right|ニホンアカガエル幼体(広島県東広島市鏡山; 撮影: 池田誠慈, Jun. 10, 2016) | ||
+ | </gallery> | ||
− | == 備考 == | + | ==備考== |
− | * [[広島県のカエル]] | + | *[[広島県のカエル]] |
*[[ニホンアカガエル_東広島キャンパス|広島大学東広島キャンパスのニホンアカガエル]] | *[[ニホンアカガエル_東広島キャンパス|広島大学東広島キャンパスのニホンアカガエル]] | ||
+ | *[[ニホンアカガエルとヤマアカガエルとタゴガエルの見分け方]] | ||
− | == 参考文献 == | + | ==参考文献== |
− | * 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島. | + | *比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島. |
− | * 前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 233 pp. 文一総合出版, 東京. | + | *前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 233 pp. 文一総合出版, 東京. |
− | * 松井正文. ニホンアカガエル. 1996. 日本動物大百科 5: 64 p. 平凡社, 東京. | + | *松井正文. ニホンアカガエル. 1996. 日本動物大百科 5: 64 p. 平凡社, 東京. |
− | * 岡田 純. 2012. ニホンアカガエル. 広島県の絶滅のおそれのある野生生物, 3版. 100 p. 広島県, 広島. | + | *岡田 純. 2012. ニホンアカガエル. 広島県の絶滅のおそれのある野生生物, 3版. 100 p. 広島県, 広島. |
− | * 大河内 勇. 1979. ニホンアカガエル. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, pp. 138-139. 家の光協会, 東京. | + | *大河内 勇. 1979. ニホンアカガエル. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, pp. 138-139. 家の光協会, 東京. |
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ニホンアカガエル Rana japonica
分類
動物界 Animalia > 脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 両生綱 Amphibia > 無尾目 Anura > アカガエル科 Ranidae > アカガエル属 Rana > ニホンアカガエル Rana japonica
解説
- 本州・四国・九州・壱岐・大隅諸島.八丈島には人為移入.
- 繁殖期は他の本土産のカエルに比べて早く,広島県内の平地で1~3月,県北で4月頃.オスは「キョッキョッキョッキョッ……」と鳴くが,鳴のうはもたない.
- 湿田や湿地などの浅い止水に約500~3000個の卵を産卵する.1個体のメスが産卵する卵はひとかたまりの卵塊としてまとまるので,卵塊の数を数えることでメスの数を推定できる.
- オスは,前肢の第1指に婚姻瘤(こんいんりゅう)をもつ.また,メスの腹面は,繁殖期に朱色になる.
- ヤマアカガエルと似るが,本種は背側線が眼の後方から真っ直ぐ伸びることとあごに黒斑がないことで区別できる(ヤマアカガエルの背側線は眼の後方で外側に曲がり,あごに数個のやや大きな黒斑をもつ).
- ヤマアカガエルとしばしば混生するが,鳴き声が違うのはもとより,本種は平地に,ヤマアカガエルは山間で見られる傾向があり(交配前隔離),人為的に ヤマアカガエルと交配させても受精不能か稔性(ねんせい)をもたず(交配後隔離),生殖的に隔離されている.
- 幼生は,背中に左右1対の黒点があり,ヤマアカガエルの幼生と区別できる.
- 冬~早春に繁殖を行うため,その時期に産卵場所となる浅い止水が必要であるが,圃場整備による乾田化や水田放棄により産卵場所が消失している.
天然記念物・RDB
- 環境省RDB:準絶滅危惧(NT)→選外へ
- 広島県RDBカテゴリ(2003):準絶滅危惧(NT)
- 広島県RDBカテゴリ(2011):準絶滅危惧(NT)
- 広島県RDBカテゴリ(2021):準絶滅危惧(NT)
- 「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):環境指標種
慣用名・英名・広島県方言
慣用名
- ニホンアカ
英名
- Japanese brown frog
広島県方言
- あかがえる
ギャラリー
備考
参考文献
- 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島.
- 前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 233 pp. 文一総合出版, 東京.
- 松井正文. ニホンアカガエル. 1996. 日本動物大百科 5: 64 p. 平凡社, 東京.
- 岡田 純. 2012. ニホンアカガエル. 広島県の絶滅のおそれのある野生生物, 3版. 100 p. 広島県, 広島.
- 大河内 勇. 1979. ニホンアカガエル. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, pp. 138-139. 家の光協会, 東京.
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