「ニホンジカ」の版間の差分

提供: 広島大学デジタル博物館
ナビゲーションに移動検索に移動
(2人の利用者による、間の10版が非表示)
21行目: 21行目:
 
*ロシア東部のアムールからベトナムにかけて分布する.
 
*ロシア東部のアムールからベトナムにかけて分布する.
 
*[[玉手_2002|玉手(2002)]]によれば,ニホンジカは大陸に起源を持ち,母系の関係を知るうえで有効なミトコンドリアにコードされた遺伝子による系統解析では南日本のグループと北日本のグループの大きく2つのグループに分かれることが明らかになっている.また,マイクロサテライトの分析では,南北のグループ間で交流がすすんでいるが,生息環境の分断化や小集団化によって地域集団間で遺伝的分化が進んでいることがわかっている.
 
*[[玉手_2002|玉手(2002)]]によれば,ニホンジカは大陸に起源を持ち,母系の関係を知るうえで有効なミトコンドリアにコードされた遺伝子による系統解析では南日本のグループと北日本のグループの大きく2つのグループに分かれることが明らかになっている.また,マイクロサテライトの分析では,南北のグループ間で交流がすすんでいるが,生息環境の分断化や小集団化によって地域集団間で遺伝的分化が進んでいることがわかっている.
 +
*東日本の一部で,過去の人為的な移入によるものと推定される南日本集団由来の遺伝的特徴をもつ個体が確認されている([[溝口ほか_2017|溝口ほか 2017]],インターネットリソース).
 +
**[[溝口ほか_2017|溝口ほか(2017)]]より引用:「1935年神奈川県丹沢山地札掛地区ではニホンジカの増殖を目的として県営丹沢鳥獣飼養所が開設され、宮城金華山の個体6頭、広島県宮産の2頭、奈良県春日大社産の6頭を飼育した歴史がある(飯村 1965; 田村 2013)」
  
 
===[[三浦_2008|三浦(2008)より]]===
 
===[[三浦_2008|三浦(2008)より]]===
50行目: 52行目:
 
==備考==
 
==備考==
 
*[[広島県の哺乳類]]
 
*[[広島県の哺乳類]]
 +
*[[宮島のシカ|宮島地域のシカについて]]
  
 
==関連ページ==
 
==関連ページ==
57行目: 60行目:
 
*阿部永, 石井信夫, 伊藤徹魯, 金子之史, 前田喜四雄, 三浦慎悟, 米田政明.  2008.  日本の哺乳類, 改定2版.  206 pp.  東海大学出版会, 秦野.
 
*阿部永, 石井信夫, 伊藤徹魯, 金子之史, 前田喜四雄, 三浦慎悟, 米田政明.  2008.  日本の哺乳類, 改定2版.  206 pp.  東海大学出版会, 秦野.
 
*広島哺乳類談話会(編).  2000.  広島県の哺乳類.  169 pp.  中国新聞社, 広島.
 
*広島哺乳類談話会(編).  2000.  広島県の哺乳類.  169 pp.  中国新聞社, 広島.
 +
*[[三浦_2012|三浦慎悟(監修).  2012.  植物を食べつくすシカ.  40 pp.  金の星社, 東京.]]
  
 
==引用文献==
 
==引用文献==
74行目: 78行目:
 
*文化遺産オンライン / 文化遺産データベース / ケラマジカおよびその生息地(けらまじかおよびそのせいそくち) https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/217989
 
*文化遺産オンライン / 文化遺産データベース / ケラマジカおよびその生息地(けらまじかおよびそのせいそくち) https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/217989
 
*環境省.  2005.  子どもパークレンジャー, 平成17年度第2回資料, 平成17年9月3日(土)-4日(日).  人間科学研究所.  http://chushikoku.env.go.jp/nature/mat/data/m_4_2/jpr_2.pdf
 
*環境省.  2005.  子どもパークレンジャー, 平成17年度第2回資料, 平成17年9月3日(土)-4日(日).  人間科学研究所.  http://chushikoku.env.go.jp/nature/mat/data/m_4_2/jpr_2.pdf
 +
*日本哺乳類学会 > ポスター発表 > P-148 広島本土と宮島におけるニホンジカの遺伝的構造の違い https://mammalogy.jp/conf/doc/MSJ2012abstract_p168_p221.pdf
 +
*東急財団 > 環境 > 学術研究成果リスト > 多摩川上流域に生息するニホンジカの遺伝構造・遺伝的多様性の評価 https://foundation.tokyu.co.jp/environment/archives/a_research/%E5%A4%9A%E6%91%A9%E5%B7%9D%E4%B8%8A%E6%B5%81%E5%9F%9F%E3%81%AB%E7%94%9F%E6%81%AF%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%8B%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%AB%E3%81%AE%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%83%BB
 +
**[[溝口ほか_2017|溝口ほか.  2017.  多摩川上流域に生息するニホンジカの遺伝構造・遺伝的多様性の評価]] https://foundation.tokyu.co.jp/environment/wp-content/uploads/2018/04/A327.pdf
  
 
----
 
----

2022年11月22日 (火) 18:19時点における版

広島大学 > デジタル自然史博物館 > メインページ> 郷土の動物 > 広島県の哺乳類 > ニホンジカ(ホンシュウジカ) | 広島県の動物図鑑 / 和名順

ニホンジカ(ホンシュウジカ)のオス(広島県廿日市市宮島町; 撮影: 池田誠慈, Mar. 4, 2001)
廿日市市宮島町長浜 Miyajima Isl., Hiroshima, SW Japan(撮影: 惠良友三郎.May 7, 2015)
ニホンジカ(ホンシュウジカ)のオス(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Feb. 8, 2019)
角にコブができた個体.(広島県廿日市市宮島町; 撮影: 中西健介, Sep. 10, 2020)
上記異常個体のコブの拡大.(広島県廿日市市宮島町; 撮影: 中西健介, Sep. 10, 2020)

ニホンジカ Cervus nippon

分類

動物界 Animalia > 脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 哺乳綱 Mammalia > ウシ目(偶蹄目) Artiodactyla > シカ科 Cervidae > ニホンジカ Cervus nippon

解説

  • 日本全土に分布する植食動物(植物食動物).
  • ロシア東部のアムールからベトナムにかけて分布する.
  • 玉手(2002)によれば,ニホンジカは大陸に起源を持ち,母系の関係を知るうえで有効なミトコンドリアにコードされた遺伝子による系統解析では南日本のグループと北日本のグループの大きく2つのグループに分かれることが明らかになっている.また,マイクロサテライトの分析では,南北のグループ間で交流がすすんでいるが,生息環境の分断化や小集団化によって地域集団間で遺伝的分化が進んでいることがわかっている.
  • 東日本の一部で,過去の人為的な移入によるものと推定される南日本集団由来の遺伝的特徴をもつ個体が確認されている(溝口ほか 2017,インターネットリソース).
    • 溝口ほか(2017)より引用:「1935年神奈川県丹沢山地札掛地区ではニホンジカの増殖を目的として県営丹沢鳥獣飼養所が開設され、宮城金華山の個体6頭、広島県宮産の2頭、奈良県春日大社産の6頭を飼育した歴史がある(飯村 1965; 田村 2013)」

三浦(2008)より

分布

ベトナムから極東アジア(中国東部,ロシア沿岸地方,台湾,朝鮮半島,日本)にかけて広く自然分布する.ヨーロッパ各地,ニュージーランド,アメリカには人為的に導入され,野生化している.日本産亜種は,北海道(エゾシカ),本州(ホンシュウジカ),四国,九州(キュウシュウジカ),淡路島・小豆島を含むいくつかの瀬戸内諸島,五島列島,馬毛島(マゲシカ),屋久島(ヤクシカ),種子島,対馬(ツシマジカ),慶良間列島(ケラマジカ,導入)などに分布する.ミトコンドリアDNAを用いた系統解析によれば,日本産亜種は北海道から兵庫県までの北日本グループと,それより西の地域(対馬,五島列島,屋久島を含む)の南日本グループに分けられる.

形態

中型のシカで,夏毛は茶色で白斑があり,冬毛は灰褐色である.黒い毛でふちどられた大きな白い尻斑をもつ.新生仔には細かい白斑がある.換毛期は5-6月,9-10月である.顕著な性的二型を示す.雄は角をもち,通常,1歳は1ポイント,2-3歳は2-3ポイント,4歳以上は4ポイントだが,大きさやポイント数は地域や亜種によって異なる.角は毎年生え換わり,成体の角長は30-80 cm.身体のサイズは,雄の方が大きく体重比にして1.5倍以上となる.また,サイズは亜種や生息地によって大きく異なる.最大はエゾジカ,最小はヤクシカである.体重(成体)は雄50-130 kg,雌25-80 kgで,季節によって増減がある.頭胴長(同)は雄90-190 cm,雌90-150 cm,肩高(同)は雄70-130 cm,雌60-110 cm,中足腺がある.眼下腺,蹄間腺は発達していない.

生態

生息環境は常緑広葉樹林,落葉広葉樹林,寒帯草原などが多様であるが,森林から完全に離れて生活することはなく,パッチ状に草原が入り込んだ森林地帯に多く生息する.積雪地域の個体群は雪を避け小規模な季節的移動を行う.落葉広葉樹林に生息するエゾジカやホンシュウジカは,イネ科草本,木の葉,堅果,ササ類などを季節に応じて採食する.とくにササ類は積雪地域の冬の主要な植物である.常緑広葉樹林に生息するキュウシュウジカなどは食性の季節的変化は少なく,1年を通じて木の葉を採食する.反芻胃をもつ.出産期は5月下旬-7月上旬で通常1仔を出産する.2仔出産の率は低い.交尾期は9月下旬-11月で,妊娠期間は約230日で,子どもの性による差はない.初産齢は2歳.最長寿命は雄15歳前後,雌20歳前後である.群れ生活を営むが,通常雄と雌は別々の群れを作る.娘は母親とともに母系的な群れを作るが,雄は1-2歳で母親のもとを離れる.一夫多妻制の社会で,雄の一部は交尾期にナワバリを作り,その中にハレムを形成する.雄は交尾期特有の音声を発し,マーキング,攻撃行動を行う.

その他

ケラマジカは国の天然記念物に指定されている.

観察

天然記念物・RDB

慣用名・英名・広島県方言

慣用名

  • シカ

英名

  • sika deer

広島県方言

備考

関連ページ

参考文献

引用文献

インターネットリソース


広島大学 > デジタル自然史博物館 > メインページ> 郷土の動物 > 広島県の哺乳類 > ニホンジカ(ホンシュウジカ) | 広島県の動物図鑑 / 和名順