「ニホンヒキガエル」の版間の差分

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[[ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3651.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)]]
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[[ファイル: 20200608ニホンヒキガエル成体メス_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_126496s.jpg|250px|thumb|right|ニホンヒキガエルの成体(メス).(発見者:吉野僚)(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jun. 8, 2020)]]
[[ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)前腕山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3659.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス).オスの前腕はメスに比べ頑強で太い.オスの吻端は突出することが多い.雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)]]
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[[ファイル:20170130ニホンヒキガエル成体_東広島市鏡山_神林撮影_IMG_4577.JPG|250px|thumb|right|ニホンヒキガエルの抱接.多数の個体が集まって産卵する様子は「蛙合戦(かわずがっせん)」と呼ばれてきた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 神林千晶, Jan. 30, 2017)]]
[[ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)婚姻瘤山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3658.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルのオスは前肢第1指と第2指,しばしば第3指に黒色の顆粒からなる婚姻瘤(白矢印)をもつ.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)]]
 
[[ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)腹面山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3662.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)の腹面.白地にだんだらの黒色斑紋があるが,変異に富む.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)]]
 
[[ファイル:20170130ニホンヒキガエル成体_東広島市鏡山_神林撮影_IMG_4577.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの抱接.多数の個体が集まって産卵する様子は「蛙合戦(かわずがっせん)」と呼ばれてきた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 神林千晶, Jan. 30, 2017)]]
 
[[ファイル:20150412ニホンヒキガエル幼生_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_0532.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ).群れになって水中を漂うように泳ぐ.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 12, 2015)]]
 
[[ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生背面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9213.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の背面.全体が黒色.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016)]]
 
[[ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生側面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9210.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の側面.全体が黒色.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016)]]
 
[[ファイル:20160411ニホンヒキガエル幼生腹面_世羅郡世羅町_池田撮影_IMG_9193.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)の腹面.腹面も黒いことで他種と区別できる.内臓はかすかに透けて見える程度.(広島県世羅郡世羅町; 撮影: 池田誠慈, Apr. 11, 2016)]]
 
[[ファイル:20190301ニホンヒキガエル卵塊_東広島市_池田撮影_IMG_37217s.JPG|250px|thumb|right|ニホンヒキガエルの卵塊.ひも状の卵塊の中に多数の卵が見える.(広島県東広島市; 撮影: 池田誠慈, Mar. 1, 2019)]]
 
[[ファイル:20160612ニホンヒキガエル亜成体_広島県北部_池田撮影_IMG_11534.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル亜成体(広島県北部; 撮影: 池田誠慈, Jun. 12, 2016)]]
 
[[ファイル:20160612ニホンヒキガエル亜成体_広島県北部_池田撮影_IMG_11540.JPG|200px|thumb|right|正面から見たニホンヒキガエル亜成体(広島県北部; 撮影: 池田誠慈, Jun. 12, 2016)]]
 
  
= ニホンヒキガエル ''Bufo japonicus japonicus'' =
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=ニホンヒキガエル ''Bufo japonicus japonicus''=
== 分類 ==
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==分類==
 
脊索動物門 Chordata  
 
脊索動物門 Chordata  
 
> 脊椎動物亜門 Vertebrata
 
> 脊椎動物亜門 Vertebrata
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> ニホンヒキガエル(亜種) ''Bufo japonicus japonicus''
 
> ニホンヒキガエル(亜種) ''Bufo japonicus japonicus''
  
== 解説 ==
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==解説==
* 鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有亜種.
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*鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有亜種.
* 広島県の山間部と一部の島嶼に分布.
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*広島県の山間部と一部の島嶼に分布.
* 宮島島内にも生息するが,詳細は要調査.
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*宮島島内にも生息するが,詳細は要調査.
* 鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ.
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*鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ.
* 耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.
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*耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.
* 飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い.
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*飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い.
* オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い.
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*オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い.
* 雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.
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*雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.
* オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた.
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*オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた.
* 3~4月頃,池や湿地,山地の水たまりなどの止水域にひも状の卵のうを産む.
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*沿岸部では2月中旬頃より,中部から県北にかけては3~4月頃,池や湿地,山地の水たまりなどの止水域にひも状の卵のうを産む.
* 卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する.
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*卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する.
* 幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ.
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*幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ.
* 変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する.
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*変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する.
* 繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する.
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*繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する.
* 広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである.
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*広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである.
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*沿岸部では,数地点でしか産卵が確認されておらず,最も絶滅の危険性の高いカエルと思われる.県中部以北に分布するから大丈夫だと考えるのではなく,多様性保全の観点から沿岸部の個体群も守っていかねばならない.
  
== 天然記念物・RDB ==
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==天然記念物・RDB==
* 環境省RDBカテゴリ:絶滅危惧II類 (VU)
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*環境省RDBカテゴリ:該当なし
* 広島県RDBカテゴリ(2011):絶滅危惧II類 (VU)
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*広島県RDBカテゴリ(2003):絶滅危惧II類(VU)
* 「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧
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*広島県RDBカテゴリ(2011):絶滅危惧II類(VU)
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*広島県RDBカテゴリ(2021):絶滅危惧II類(VU)
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*「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧
  
== 慣用名・英名・広島県方言 ==
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==慣用名・英名・広島県方言==
=== 慣用名 ===
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=== 英名 ===
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* Japanese common toad
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*Japanese common toad
  
=== 広島県方言 ===
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* がま
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* がまがえる
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* ひき
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* どんびき
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*どんびき
* ひこはち
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*ひこはち
  
== 備考 ==
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==ギャラリー==
* [[広島県のカエル]]
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* [[宮島のカエル|宮島に生息するカエル]]
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ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)頭部側面山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3664.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス)の頭部側面.鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ(白両矢印).耳腺(白矢印)や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
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ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)前腕山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3659.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエル(オス).オスの前腕はメスに比べ頑強で太い.オスの吻端は突出することが多い.雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
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ファイル:20150821ニホンヒキガエル(オス)婚姻瘤山県郡安芸太田町池田撮影IMG_3658.JPG|200px|thumb|right|ニホンヒキガエルのオスは前肢第1指と第2指,しばしば第3指に黒色の顆粒からなる婚姻瘤(白矢印)をもつ.(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
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ファイル:20160612ニホンヒキガエル亜成体_広島県北部_池田撮影_IMG_11540.JPG|200px|thumb|right|正面から見たニホンヒキガエル亜成体(広島県北部; 撮影: 池田誠慈, Jun. 12, 2016)
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ファイル: 20200916ニホンヒキガエル_広島県廿日市市吉和_中西撮影_DSC_0009s.JPG|200px|thumb|right|赤色の斑点がある亜成体.(広島県廿日市市吉和; 撮影: 中西健介, Sep. 16, 2020)
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ファイル:20190801ニホンヒキガエル幼体_廿日市市北部_池田撮影_IMG_47078s.JPG|200px|thumb|right|約2 cmまで成長したニホンヒキガエルの幼体(広島県廿日市市北部; 撮影: 池田誠慈, Aug. 1, 2019)
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== 参考文献 ==
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==備考==
* 比婆科学教育振興会(編).  1996.  広島県の両生・爬虫類.  168 pp.  中国新聞社, 広島.
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*[[広島県のカエル]]
* 前田憲男・松井正文.  1999.  改訂版 日本カエル図鑑.  233 pp.  文一総合出版, 東京.
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*[[宮島のカエル|宮島に生息するカエル]]
* 松井正文.  1979.  ニホンヒキガエル.  千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 126.  家の光協会, 東京.
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*[[ニホンヒキガエル_広島大学東広島キャンパス|広島大学東広島キャンパスのニホンヒキガエル]]
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==参考文献==
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*比婆科学教育振興会(編).  1996.  広島県の両生・爬虫類.  168 pp.  中国新聞社, 広島.
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*前田憲男・松井正文.  1999.  改訂版 日本カエル図鑑.  233 pp.  文一総合出版, 東京.
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*松井正文.  1979.  ニホンヒキガエル.  千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 126.  家の光協会, 東京.
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==更新履歴==
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*2021.02.25 環境省RDBカテゴリに誤記載があり,修正しました.また,沿岸部での産卵期の情報提供を受け,解説を編集しました.
 
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ニホンヒキガエル(オス)(広島県山県郡安芸太田町; 撮影: 池田誠慈, Aug. 21, 2015)
ニホンヒキガエルの成体(メス).(発見者:吉野僚)(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jun. 8, 2020)
ニホンヒキガエルの抱接.多数の個体が集まって産卵する様子は「蛙合戦(かわずがっせん)」と呼ばれてきた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 神林千晶, Jan. 30, 2017)

ニホンヒキガエル Bufo japonicus japonicus

分類

脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 両生綱 Amphibia > 無尾目 Anura > ヒキガエル科 Bufonidae > ヒキガエル属 Bufo > ニホンヒキガエル(種)ニホンヒキガエル Bufo japonicus > ニホンヒキガエル(亜種) Bufo japonicus japonicus

解説

  • 鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方,四国,九州,屋久島に自然分布.日本固有亜種.
  • 広島県の山間部と一部の島嶼に分布.
  • 宮島島内にも生息するが,詳細は要調査.
  • 鼓膜は小さく,眼と鼓膜の間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ.
  • 耳腺や背中の毒腺からブフォトキシン(いわゆるガマ毒)を出す.
  • 飛び跳ねるのではなく,歩行して移動することが多い.
  • オスは前腕部がメスに比べ頑強で太く,吻端が突出することが多い.
  • 雌雄ともに鳴のうと鳴のう孔をもたない.
  • オスは脇を掴むと「クックック……」と鳴く.これは「リリースコール」と呼ばれ,繁殖期に他のオスに抱き付かれた時に「放せ」と言うように鳴くことから名付けられた.
  • 沿岸部では2月中旬頃より,中部から県北にかけては3~4月頃,池や湿地,山地の水たまりなどの止水域にひも状の卵のうを産む.
  • 卵は1週間程度でふ化し,真っ黒な幼生(オタマジャクシ)となる.5~6月頃には3.5 cm程度まで成長する.
  • 幼生は水底にとどまるのではなく,水面から水中の間を漂うように群れで泳ぐ.
  • 変態すると約1 cmの真っ黒な子ガエルになる.オスは2年,メスは3~4年で成熟する.
  • 繁殖期以外は水に入らず,陸上で生活する.
  • 広島県沿岸部の平地では開発に伴って生息地が激減し,山間部や一部の島嶼部に遺っているのみである.
  • 沿岸部では,数地点でしか産卵が確認されておらず,最も絶滅の危険性の高いカエルと思われる.県中部以北に分布するから大丈夫だと考えるのではなく,多様性保全の観点から沿岸部の個体群も守っていかねばならない.

天然記念物・RDB

  • 環境省RDBカテゴリ:該当なし
  • 広島県RDBカテゴリ(2003):絶滅危惧II類(VU)
  • 広島県RDBカテゴリ(2011):絶滅危惧II類(VU)
  • 広島県RDBカテゴリ(2021):絶滅危惧II類(VU)
  • 「広島市の生物」(広島版レッドデータブック):広島市の絶滅のおそれのあるもの・準絶滅危惧

慣用名・英名・広島県方言

慣用名

英名

  • Japanese common toad

広島県方言

  • がま
  • がまがえる
  • ひき
  • どんびき
  • ひこはち

ギャラリー

備考

参考文献

  • 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島.
  • 前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 233 pp. 文一総合出版, 東京.
  • 松井正文. 1979. ニホンヒキガエル. 千石正一(編), 原色両生・爬虫類, p. 126. 家の光協会, 東京.

更新履歴

  • 2021.02.25 環境省RDBカテゴリに誤記載があり,修正しました.また,沿岸部での産卵期の情報提供を受け,解説を編集しました.

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