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− | == 解説 == | + | ==解説== |
− | * 本州・四国・九州・対馬・屋久島に分布.国外では朝鮮半島南部・中国東南部に分布. | + | *本州・四国・九州・対馬・屋久島に分布.国外では朝鮮半島南部・中国東南部に分布. |
− | + | *人工的環境に適応した生物,シナントロープ(synanthropeまたはsynanthrop)の1例. | |
− | * 人工的環境に適応した生物,シナントロープ(synanthropeまたはsynanthrop)の1例. | + | *広島県では,島嶼部から沿岸部を中心に分布している. |
− | * 広島県では,島嶼部から沿岸部を中心に分布している. | + | *宮島では,民家などの建築物や海岸から山地の岩場などに定着しているようだ. |
− | * 宮島では,民家などの建築物や海岸から山地の岩場などに定着しているようだ. | + | *人家の電灯に飛んできた昆虫などを捕食する. |
− | * 人家の電灯に飛んできた昆虫などを捕食する. | + | *メスは5~8月,家屋や岩などの狭い隙間に2個の卵を産む. |
− | * メスは5~8月,家屋や岩などの狭い隙間に2個の卵を産む. | + | *肢の指の裏には微細な毛が密集した指下板(しかばん)があり,ファンデルワールス力([[van_der_Waals_forces|van der Waals forces]])により垂直な壁面などに吸着することができる. |
− | * 肢の指の裏には微細な毛が密集した指下板(しかばん)があり,ファンデルワールス力([[van_der_Waals_forces|van der Waals forces]])により垂直な壁面などに吸着することができる. | + | *本種は尾の付け根の両側に側肛疣(そっこうゆう)という,いぼ状構造の大型鱗を2~4対もつ.オスのものはメスより大きい. |
− | * 本種は尾の付け根の両側に側肛疣(そっこうゆう)という,いぼ状構造の大型鱗を2~4対もつ.オスのものはメスより大きい. | + | *総排泄腔より上に前肛孔(ぜんこうこう)という,分泌物を出す腺孔をもつ.オスでよく発達している. |
− | * 総排泄腔より上に前肛孔(ぜんこうこう)という,分泌物を出す腺孔をもつ.オスでよく発達している. | + | *県内には他に日本固有種の[[タワヤモリ]]が生息しているが,本種の胴背面には大型の顆粒状鱗(かりゅうじょうりん)が交じること,側肛疣が2~4対であること,前肛孔をもつこと,尾の付け根の斑紋がW字型になることなどで区別できる. |
− | * 県内には他に日本固有種の[[タワヤモリ]]が生息しているが,本種の胴背面には大型の顆粒状鱗(かりゅうじょうりん)が交じること,側肛疣が2~4対であること,前肛孔をもつこと,尾の付け根の斑紋がW字型になることなどで区別できる. | + | *生息場所が人家などの周辺に偏っていることから,中国大陸からの物資の輸送に伴い人為的に移入された外来種である可能性が極めて高いと言われていた.Chiba et al.(2022)による遺伝子の解析と古文書の分析で,3000年前に中国大陸より渡来し広がったた史前帰化種であることが明らかとなった. |
− | == 天然記念物・RDB == | + | ==天然記念物・RDB== |
− | * | + | *該当なし |
− | == 慣用名・英名・広島県方言 == | + | ==慣用名・英名・広島県方言== |
− | === 慣用名 === | + | ===慣用名=== |
− | * ヤモリ | + | *ヤモリ |
+ | ===英名=== | ||
+ | *Japanese gecko | ||
+ | ===広島県方言=== | ||
+ | *ひちぶ([[タワヤモリ]]と混用(倉橋島)) | ||
− | === | + | ==ギャラリー== |
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+ | ファイル:ニホンヤモリ雌雄の比較(背面)池田作成IMG_1501_1925.JPG|200px|thumb|right|ニホンヤモリの雌雄の比較(背面).オス(写真左)は尾の付け根が大きく膨らみ,側肛疣(そっこうゆう)が大きく発達する.メス(写真右)は膨らみがなく側肛疣が発達しない.ニホンヤモリの尾にはW字型の模様がある.(広島県三原市沼田東町; 撮影: 池田誠慈, オスはJun. 15,2015. メスはJun. 28, 2015) | ||
+ | ファイル:ニホンヤモリ雌雄の比較(側面)池田作成IMG_1502_1921.JPG|200px|thumb|right|ニホンヤモリの雌雄の比較(側面).オス(写真上)は尾の付け根が大きく膨らみ,側肛疣(そっこうゆう)が大きく発達する.メス(写真下)は膨らみがなく側肛疣が発達しない.(広島県三原市沼田東町; 撮影: 池田誠慈, オスはJun. 15,2015. メスはJun. 28, 2015) | ||
+ | ファイル:ニホンヤモリ雌雄の比較(腹面)池田作成IMG_1462_1515.JPG|200px|thumb|right|ニホンヤモリの雌雄の比較(腹面).オス(写真左)は尾の付け根が大きく膨らみ,前肛孔(ぜんこうこう)(白矢印)が発達する.メス(写真右)は膨らみがなく前肛孔はオスほど発達しない.(広島県三原市沼田東町; 撮影: 池田誠慈, オスはJun. 15,2015. メスはJun. 28, 2015) | ||
+ | ファイル:20150628ニホンヤモリ(メス)腹面三原市沼田東町池田撮影IMG_1897.JPG|200px|thumb|right|ニホンヤモリ(メス)の腹面.卵がふたつ透けて見える.産卵を控え頸部にカルシウムを蓄積している(白矢印).(広島県三原市沼田東町; 撮影: 池田誠慈, Jun. 28, 2015) | ||
+ | ファイル:20150615ニホンヤモリ指下板三原市沼田東町池田撮影IMG_1507.JPG|200px|thumb|right|ニホンヤモリの指下板.微細な毛の集まり.ファンデルワールス力で壁面に吸着することができる.(広島県三原市沼田東町; 撮影: 池田誠慈, Jun. 15, 2015) | ||
+ | ファイル:20160112タワヤモリとニホンヤモリの比較_大川撮影_IMGP0133.JPG|200px|thumb|right|ニホンヤモリ(上)とタワヤモリ(下)の比較.タワヤモリの方がやや体色が濃い.ニホンヤモリの尾にはW字型の模様が出ることが多い.(撮影: 大川博志, Jan. 20, 2015) | ||
+ | ファイル:タワヤモリとニホンヤモリの比較(尾)_池田作成_1501_6473.JPG|200px|thumb|right|タワヤモリとニホンヤモリの比較(尾).タワヤモリは体色が濃く,尾の斑紋が顕著(写真左).ニホンヤモリの尾にはW字型の模様が出ることが多い(写真右).(撮影: 池田誠慈, タワヤモリはDec. 18, 2015. ニホンヤモリはJun. 15, 2015) | ||
+ | ファイル:タワヤモリとニホンヤモリの比較(胴背面)_池田作成_1503_6454.JPG|200px|thumb|right|タワヤモリとニホンヤモリの比較(胴背面).タワヤモリが均一な鱗のみが並ぶのに対し(写真左),ニホンヤモリは大型の顆粒状鱗(かりゅうじょうりん)が交じる.クリックして拡大画像.(撮影: 池田誠慈, タワヤモリはDec. 18, 2015. ニホンヤモリはJun. 15, 2015) | ||
+ | ファイル:20160114ニホンヤモリ越冬中_廿日市市宮島町_田守撮影_DSC_1160.JPG|200px|thumb|right|岩の割れ目で越冬中(冬越し中)のニホンヤモリ.(広島県廿日市市宮島町; 撮影: 田守泰裕, Jan. 14, 2016) | ||
+ | ファイル:20160227ニホンヤモリ成体_廿日市市宮島町_田守撮影DSC_0597S.JPG|200px|thumb|right|ニホンヤモリ成体(広島県廿日市市宮島町; 撮影: 田守泰裕, Feb. 27, 2016) | ||
+ | ファイル: 20190516ニホンヤモリ成体メス_東広島市鏡山_南葉撮影_IMG_52271s.jpg|200px|thumb|right|夜活動するニホンヤモリの成体(メス).(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, May. 16, 2019) | ||
+ | </gallery> | ||
− | == | + | ==備考== |
− | * | + | *[[宮島の爬虫類|宮島に生息する爬虫類]] |
+ | *[[広島県の爬虫類]] | ||
+ | *[[ニホンヤモリとタワヤモリの見分け方]] | ||
− | + | ==文献(引用)== | |
− | + | *比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島. | |
− | + | *Chiba, M., Hirano, T., Yamazaki, D., Ye, B., Ito, S., Kagawa, O., Endo, K., Nishida, S., Hara S., Aratake, K. & Chiba, S. 2022. The mutual history of Schlegel’s Japanese gecko (Reptilia Squamata | |
− | + | Gekkonidae) and humans inscribed in genes and ancient literature. PNAS Nexus 1: 1-10. DOI: 10.1093/pnasnexus/pgac245 | |
− | == 文献(引用) == | + | *中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 214 pp. 保育社, 大阪. |
− | * 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島. | + | *千石正一(編). 原色両生・爬虫類. 206 pp. 家の光協会, 東京. |
− | * 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 214 pp. 保育社, 大阪. | + | *田中 聡. 1996. ヤモリ・トカゲモドキ類. 日本動物大百科 5: 65-68 pp. 平凡社, 東京. |
− | * 千石正一(編). 原色両生・爬虫類. 206 pp. 家の光協会, 東京. | + | *田中 聡. 1996. ニホンヤモリ. 日本動物大百科 5: 69 p. 平凡社, 東京. |
− | * 田中 聡. 1996. ヤモリ・トカゲモドキ類. 日本動物大百科 5: 65-68 pp. 平凡社, 東京. | ||
− | * 田中 聡. 1996. ニホンヤモリ. 日本動物大百科 5: 69 p. 平凡社, 東京. | ||
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ニホンヤモリ Gekko japonicus
分類
動物界 Animalia > 脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 爬虫綱 Reptilia > 有鱗目 Squamata > トカゲ亜目 Lacertilia > ヤモリ科 Gekkonidae > ヤモリ属 Gekko > ニホンヤモリ Gekko japonicus
解説
- 本州・四国・九州・対馬・屋久島に分布.国外では朝鮮半島南部・中国東南部に分布.
- 人工的環境に適応した生物,シナントロープ(synanthropeまたはsynanthrop)の1例.
- 広島県では,島嶼部から沿岸部を中心に分布している.
- 宮島では,民家などの建築物や海岸から山地の岩場などに定着しているようだ.
- 人家の電灯に飛んできた昆虫などを捕食する.
- メスは5~8月,家屋や岩などの狭い隙間に2個の卵を産む.
- 肢の指の裏には微細な毛が密集した指下板(しかばん)があり,ファンデルワールス力(van der Waals forces)により垂直な壁面などに吸着することができる.
- 本種は尾の付け根の両側に側肛疣(そっこうゆう)という,いぼ状構造の大型鱗を2~4対もつ.オスのものはメスより大きい.
- 総排泄腔より上に前肛孔(ぜんこうこう)という,分泌物を出す腺孔をもつ.オスでよく発達している.
- 県内には他に日本固有種のタワヤモリが生息しているが,本種の胴背面には大型の顆粒状鱗(かりゅうじょうりん)が交じること,側肛疣が2~4対であること,前肛孔をもつこと,尾の付け根の斑紋がW字型になることなどで区別できる.
- 生息場所が人家などの周辺に偏っていることから,中国大陸からの物資の輸送に伴い人為的に移入された外来種である可能性が極めて高いと言われていた.Chiba et al.(2022)による遺伝子の解析と古文書の分析で,3000年前に中国大陸より渡来し広がったた史前帰化種であることが明らかとなった.
天然記念物・RDB
- 該当なし
慣用名・英名・広島県方言
慣用名
- ヤモリ
英名
- Japanese gecko
広島県方言
- ひちぶ(タワヤモリと混用(倉橋島))
ギャラリー
備考
文献(引用)
- 比婆科学教育振興会(編). 1996. 広島県の両生・爬虫類. 168 pp. 中国新聞社, 広島.
- Chiba, M., Hirano, T., Yamazaki, D., Ye, B., Ito, S., Kagawa, O., Endo, K., Nishida, S., Hara S., Aratake, K. & Chiba, S. 2022. The mutual history of Schlegel’s Japanese gecko (Reptilia Squamata
Gekkonidae) and humans inscribed in genes and ancient literature. PNAS Nexus 1: 1-10. DOI: 10.1093/pnasnexus/pgac245
- 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 214 pp. 保育社, 大阪.
- 千石正一(編). 原色両生・爬虫類. 206 pp. 家の光協会, 東京.
- 田中 聡. 1996. ヤモリ・トカゲモドキ類. 日本動物大百科 5: 65-68 pp. 平凡社, 東京.
- 田中 聡. 1996. ニホンヤモリ. 日本動物大百科 5: 69 p. 平凡社, 東京.
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