分子系統学概略

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系統学

  • 生物のもつ情報(形質)から,生物の進化の道筋(系統関係)を推定する学問分野.
  • 系統関係を表す場合,系統樹の形で表されることが多い.
  • 現在では狭義に,分子のもつ情報に基づいた系統関係の推定(分子系統学)をさす場合も多い.

歴史

分類を行う際,重要と考えられる形質に基づいて分類を行う立場が古くから一般的であった.しかし,この形質の選択には,主観の入る可能性が否定できないという点を批判する立場があった.この立場のなかから,形質を客観的に評価する方法が考え出され,数量分類学や分岐分類学といったいくつかの学派が1940-1950年代にあらわれた.

  • 抗原抗体反応による免疫学的研究~最初の分子データにもとづいた系統学に関する研究(Nuttal 1904)
  • タンパク質の雑種形成
  • アロザイム解析~タンパク質の電気泳動による分離と活性染色
  • タンパク質のアミノ酸配列~プロテインシークエンサー
  • DNAの塩基配列~DNAシークエンサー

分子系統学

分類を行うとき,前提として系統を念頭に形質の評価を行って行くのが一般的である.以前は,形態形質に基づいて系統関係を推定し,議論を行なっていた.しかし,推定に基づいて議論を進めることは限界がある.このため,より客観的な情報に基づいて系統関係を明らかにした上で,形態形質の変化を議論することが求められるようになった.

現在では,分子生物学的手法およびコンピュータの発達にともない,DNAの塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列などの客観的な情報が,以前より容易に入手できるようになった.このため,これらの分子データに基づいて系統解析を行なうことが現在では一般的となっている.このような学問分野を分子系統学と呼ぶ.

  • 分子のもつ客観的な情報をもとに系統関係を推定する.
  • 情報量の増大と,理論の発達,コンピュータの発達により,分子系統学が台頭.
  • 地球上の生物は共通の起源を持つため,系統樹によりお互いの関係を表すことができる.

分子データの特徴

  • ランダムな変化を伴う.
  • 形態とは独立した進化過程をとる.
  • 原則として現存のデータしか用いることができない.
  • データの再利用が容易.

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