「植物採集の方法」の版間の差分

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2022年1月18日 (火) 20:37時点における版

植物採集の方法

植物採集の方法と標本の作り方

生物の種を知ることは,生物学の第一歩である.生物の種の違いを知らないでは,生物学は成立しないのである.分類学が生物学の基礎だといわれる所以はここにある.

植物の名前を調べたり,種の違いを比較したり,ある値域の植物相を明らかにするために標本を作る必要がある.どんな用具が必要か,採集の方法,標本の作り方,整理と保存などについて考えてみよう.

1. 採集用具

<ポリ袋>
採集した植物を入れる.厚手のもので縦60 cm,横40 cmくらい,米袋や肥料袋もよい.紙袋では植物がしおれる.ポリ袋のままで持ちにくい時は,手さげ袋にポリ袋を入れるとよい.そのときは薄手のチリ袋でもよい.採集物を入れたらしおれないように袋の口を閉める.以前は胴乱(どうらん)を利用していたが,現在は利用されない.
<せん定バサミ>
手で折りにくい太い枝などを切り取る.折るより切るほうが植物にとっては害が少ない.
<根掘り>
根や根茎に特徴がある小型の草本やシダ類などは根ごと掘り取る.根の泥はきれいにおとす.とくに水辺や湿地の植物は泥を洗い流したほうがよい.
<野冊>
厚さ3‐5 mmのベニヤ板で32×45 cmくらいのを2枚用意し,間に新聞紙をはさみ,ひも2本(両端にかぎをつけたゴムひもなど)で縛る.傷みやすい花やしおれやすい植物などは,すぐに新聞紙にはさむ.再生紙の漫画本は花や小さい植物をはさむのに都合がよい.休憩時を利用して,一杯になったポリ袋の採集物を整理して野冊の新聞紙にはさんでおくと,後が楽である.
<荷札(付箋紙)と筆記具>
荷札にあらかじめ,一連番号(これが採集番号になる)を鉛筆,または油性サインペンで書いておく(水性ペンだとにじむ).採集順に教えてもらった植物名を荷札に書き込み,植物に荷札をつける.野帳(手帳)にも適当な間隔をあけて,同じ一連番号を前もって書いておく.鉛筆は予備を持つこと.
<その他>
小さいポリ袋(小型の採集品を入れる),ルーペ,地図,高度計,コンパス,雨具,水筒,軍手,救急用品,笛(呼子),ぼうし,カメラなど.

2. 採集方法

採集には,完全標本(花,実がついたもの,シダでは胞子のう群がついたもの)を取るのが望ましい.また,周囲をよく見て,良好な生育状態のものを選ぶ.標本の大きさの標準は,木本では30 cm内外(手首からひじまでが目安)をめどに切り取る.掘り取った草本は30 cm位に折りたたむ.荷札をつけた標本は横にして袋に入れ,はみ出さないように袋の口を閉めてしおれを防ぐ.


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