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 2015年5月17日の第566回植物観察会は安芸太田町の三段峡で行われた.集合場所の餅ノ木駐車場は広く,三段峡の上流部に手軽に入れる.晴天で,参加者42名,10時から歩き始めるが,明るい林縁部に開花中の植物が多く,渓谷に入るまでに30分以上かかってしまった.何か煙が出ているとの声に目を凝らすと,[[ヒメコウゾ]]の雄花序から飛ぶ花粉,球形の雌花序には細毛が密生した細い花柱があり,風媒花の仕組みが良く解る.[[コバノガマズミ]],[[ツリバナ]],[[サルトリイバラ]],[[タチシオデ]],[[コマユミ]]が開花,[[ウリハダカエデ]],[[マタタビ]]は葉を展開しているが花はまだ.スギ林内に入ると[[コケイラン]]の花ざかり,[[チャルメルソウ]]は果実になっていた.渓谷に入ると,斜面下部に堆積した崩土上に[[ヤグルマソウ]]が目立ち,[[コイカリソウ]]は果実,渓畔の[[トチノキ]]と[[リョウメンシダ]]は定番.大きな葉を展開した[[ウスゲクロモジ]]の下には[[ムラサキマユミ]].[[サワフタギ]]は咲き始め,[[ハナイカダ]]には雌花が多い,[[ヤマアジサイ]]と[[ウリノキ]]はつぼみ,[[エンレイソウ]]は果実が膨らんでいる.[[ハスノハイチゴ]]が特徴のある葉を広げ,もう少しで開花.足元に[[サワハコベ]]と[[タニギキョウ]]の白い花,岩の上に[[オオイワカガミ]]の新葉と淡紅色の花,[[ウスギヨウラク]]も咲いている.対岸の渓畔に[[キシツツジ]]の花,岩上は[[ヒメレンゲ]]が満開で黄一色.路傍には[[ナツトウダイ]]の奇妙な花と果実,[[ミズタビラコ]]の花.葉が一枚で特徴のある仏炎苞を持った[[オモゴウテンナンショウ]]が点在,1939年に記載された珍種[[アキテンナンショウ|解説#オモゴウテンナンショウ]]として知られていたが,1932年記載の愛媛県面河渓産と同種であることが判明,異名となった.やや乾いた場所には[[オトコヨウゾメ]],[[ヤブニンジン]],[[ホガエリガヤ]]の花,[[ミヤマニガイチゴ]],[[コゴメウツギ]]につぼみが見られた.三段滝展望台への到着が12時を過ぎたので,ここで昼食,往路を引き返す.本日のコースは標高600—650 mで基本的にはウラジロガシ林の領域であるが[[イヌブナ]]が多い,崩積地には[[トチノキ]]や[[サワグルミ]],岩石地には[[ケヤキ]]が多い.また,多雪地に適応した変種の[[アシュウスギ]],[[チャボガヤ]],[[ハイイヌツゲ]]が多いことも特徴である.
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 2015年5月17日の第566回植物観察会は安芸太田町の三段峡で行われた.集合場所の餅ノ木駐車場は広く,三段峡の上流部に手軽に入れる.晴天で,参加者42名,10時から歩き始めるが,明るい林縁部に開花中の植物が多く,渓谷に入るまでに30分以上かかってしまった.何か煙が出ているとの声に目を凝らすと,[[ヒメコウゾ]]の雄花序から飛ぶ花粉,球形の雌花序には細毛が密生した細い花柱があり,風媒花の仕組みが良く解る.[[コバノガマズミ]],[[ツリバナ]],[[サルトリイバラ]],[[タチシオデ]],[[コマユミ]]が開花,[[ウリハダカエデ]],[[マタタビ]]は葉を展開しているが花はまだ.スギ林内に入ると[[コケイラン]]の花ざかり,[[チャルメルソウ]]は果実になっていた.渓谷に入ると,斜面下部に堆積した崩土上に[[ヤグルマソウ]]が目立ち,[[コイカリソウ]]は果実,渓畔の[[トチノキ]]と[[リョウメンシダ]]は定番.大きな葉を展開した[[ウスゲクロモジ]]の下には[[ムラサキマユミ]].[[サワフタギ]]は咲き始め,[[ハナイカダ]]には雌花が多い,[[ヤマアジサイ]]と[[ウリノキ]]はつぼみ,[[エンレイソウ]]は果実が膨らんでいる.[[ハスノハイチゴ]]が特徴のある葉を広げ,もう少しで開花.足元に[[サワハコベ]]と[[タニギキョウ]]の白い花,岩の上に[[オオイワカガミ]]の新葉と淡紅色の花,[[ウスギヨウラク]]も咲いている.対岸の渓畔に[[キシツツジ]]の花,岩上は[[ヒメレンゲ]]が満開で黄一色.路傍には[[ナツトウダイ]]の奇妙な花と果実,[[ミズタビラコ]]の花.葉が一枚で特徴のある仏炎苞を持った[[オモゴウテンナンショウ]]が点在,1939年に記載された珍種[[アキテンナンショウ|解説#オモゴウテンナンショウ|アキテンナンショウ]]として知られていたが,1932年記載の愛媛県面河渓産と同種であることが判明,異名となった.やや乾いた場所には[[オトコヨウゾメ]],[[ヤブニンジン]],[[ホガエリガヤ]]の花,[[ミヤマニガイチゴ]],[[コゴメウツギ]]につぼみが見られた.三段滝展望台への到着が12時を過ぎたので,ここで昼食,往路を引き返す.本日のコースは標高600—650 mで基本的にはウラジロガシ林の領域であるが[[イヌブナ]]が多い,崩積地には[[トチノキ]]や[[サワグルミ]],岩石地には[[ケヤキ]]が多い.また,多雪地に適応した変種の[[アシュウスギ]],[[チャボガヤ]],[[ハイイヌツゲ]]が多いことも特徴である.
 
<div style="text-align:right">(H. Taoda記)</div>
 
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2015年6月9日 (火) 10:57時点における版

ヒコビアミニレターNo. 442(2015年6月09日)

 2015年5月17日の第566回植物観察会は安芸太田町の三段峡で行われた.集合場所の餅ノ木駐車場は広く,三段峡の上流部に手軽に入れる.晴天で,参加者42名,10時から歩き始めるが,明るい林縁部に開花中の植物が多く,渓谷に入るまでに30分以上かかってしまった.何か煙が出ているとの声に目を凝らすと,ヒメコウゾの雄花序から飛ぶ花粉,球形の雌花序には細毛が密生した細い花柱があり,風媒花の仕組みが良く解る.コバノガマズミツリバナサルトリイバラタチシオデコマユミが開花,ウリハダカエデマタタビは葉を展開しているが花はまだ.スギ林内に入るとコケイランの花ざかり,チャルメルソウは果実になっていた.渓谷に入ると,斜面下部に堆積した崩土上にヤグルマソウが目立ち,コイカリソウは果実,渓畔のトチノキリョウメンシダは定番.大きな葉を展開したウスゲクロモジの下にはムラサキマユミサワフタギは咲き始め,ハナイカダには雌花が多い,ヤマアジサイウリノキはつぼみ,エンレイソウは果実が膨らんでいる.ハスノハイチゴが特徴のある葉を広げ,もう少しで開花.足元にサワハコベタニギキョウの白い花,岩の上にオオイワカガミの新葉と淡紅色の花,ウスギヨウラクも咲いている.対岸の渓畔にキシツツジの花,岩上はヒメレンゲが満開で黄一色.路傍にはナツトウダイの奇妙な花と果実,ミズタビラコの花.葉が一枚で特徴のある仏炎苞を持ったオモゴウテンナンショウが点在,1939年に記載された珍種解説#オモゴウテンナンショウ|アキテンナンショウとして知られていたが,1932年記載の愛媛県面河渓産と同種であることが判明,異名となった.やや乾いた場所にはオトコヨウゾメヤブニンジンホガエリガヤの花,ミヤマニガイチゴコゴメウツギにつぼみが見られた.三段滝展望台への到着が12時を過ぎたので,ここで昼食,往路を引き返す.本日のコースは標高600—650 mで基本的にはウラジロガシ林の領域であるがイヌブナが多い,崩積地にはトチノキサワグルミ,岩石地にはケヤキが多い.また,多雪地に適応した変種のアシュウスギチャボガヤハイイヌツゲが多いことも特徴である.

(H. Taoda記)

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