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=ヒコビアミニレター No. 531(2022年02月15日)=
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=ヒコビアミニレター No. 531(2021年11月15日)=
 2021年10月17日の第654回植物観察会は広島県山県郡安芸太田町の筒賀龍頭峡で開催された.天気は曇り時々雨.参加者xx名.新型コロナウイルス感染症の影響で中止がつづいていたが,感染者数が少し減少したため実施した.10時に龍頭峡駐車場(渓谷中間の駐車場)に集合.コースの説明の後,出発.駐車場周辺に[[カラムシ]]や[[イノコヅチ]],[[ヘクソカズラ]],[[ウリカエデ]],[[ススキ]],[[ヒメジョオン]],[[トウバナ]],[[ミズヒキ]],[[キツネノボタン]],ノコンギク,エノキグサ,ノキシノブ,サワグルミ,ネムノキ,アカマツ,イロハモミジ,アキチョウジ,コアカソ,ノリウツギ,ノブドウ,ヤマノイモ,ホオノキ,スギ,メヤブマオ,ツルウメモドキなどがあった.散策道沿いを進んだ.芝生広場までの道中で,オオツヅラフジやウワミズザクラ,ミヤマカンスゲ,ノガリヤス,ヒメワラビ,キヨタキシダ,ミゾシダ,クロモジ,イヌガヤ,コガクウツギ,アブラチャン,ミヤマイタチシダ,ヤブニッケイ,フトリュウビゴケ,ビロードシダ,ケイワガラミ,ウラジロガシ,ヒサカキ,ヤブムラサキ,ツリバナ,マルバフユイチゴ,オオバアサガラ,ハクモウイノデ,ヤマアジサイ,フユイチゴ,オオサンショウソウ,ミヤマフユイチゴ,サイゴクイノデ,ゼンマイ,ミヤマカタバミ,コウヤミズキ,ウリノキ,ミヤマクロモジ(ウスゲクロモジ),シロダモ,イノデモドキ,オクノカンスゲ,ジュウモンジシダ,サワダツ,オニカナワラビ,オオキジノオ,ミズタビラコ,コカンスゲ,エイザンスミレ,アカショウマ,チャルメルソウ,トチノキ,カツラ,リョウメンシダ,ヤマシロギク,アワブキ,コウヤミズキ,アカメガシワ,ウグイスカグラ,エゴノキ,ムカゴイラクサ,ヤブデマリ,ウメモドキ,ハンショウヅル,ナワシログミ,ヤブコウジ,ツタ,イワガラミ,ヤマジノホトトギス,タニイヌワラビ,シシガシラ,コウヤコケシノブ,ヤワラシダ,トウゲシバ,イヌシダ,チヂミザサ,コバノミツバツツジ,バイカツツジ,コツクバネウツギ,キヨスミイトゴケ,コバノイシカグマ,キヨスミヒメワラビ,ビロードイチゴ,キシノブイトゴケ,ホソバコケシノブ,ツタウルシ,ゴトウヅル,タニイヌワラビ,ウツギ,クロタキカズラ,ツゲ,チャボガヤ,ツガ,ヤブツバキ,ヤマグルマ,キッコウハグマ,ヤマソテツ,アクシバ,ユズリハ,サカキ,サワグルミ,ヒロハシノブイトゴケ,クマノミズキ,ケヤキ,ウラジロガシ,ヤブハギ,コハウチワカエデ,オオバヒヨドリバナ,ツルリンドウ,イタドリ,ムラサキシキブ,マルバアオダモ,コバノガマズミ,ヤマシグレ,オオキジノオシダ,ミヤマガマズミ,ミツバアケビ,ヤマザクラ,コアジサイなどが確認された.橋を右折してさらに谷を進んだ.ナメラ滝までの道沿いでヒガンマムシグサやコセイタカスギゴケ,ナガバモミジイチゴ,テイカカズラ,ミズスギモドキ,ベニドウダン,キウイフルーツ,ウバユリ,ミヤマシキミ,ナメラダイモンジソウ,シラキ,ホドイモ,アカシデ,キバナアキギリ,オオカモメヅル,[[ヒメウワバミソウ]],[[コウヤザサ]],バイカオウレン,アセビ,サルトリイバラ,アオダモ,キブシ,ソヨゴ,サルナシ,ショウジョウバカマ,コバノフユイチゴ,イヌツゲ,シノブなどが観察できた.さらに道を進み二段滝を経て奥の滝に向かう道中で,オオイワカガミやタムシバ,ナンキンナナカマド,ノギラン,ショウジョウスゲ,ネジキ,ダイセンミツバツツジ,リョウブ,ツルアリドオシ(果実),ゲンカイツツジ,ヤマウルシ,ハリガネワラビ,アケボノシュスラン,シライトソウ,デワノタツナミ,コバンノキ,シキミ,アケビ,ミヤマカラマツ,オオバコ,ヒメバライチゴ,セリバオウレン,シコクスミレ,モミジハグマ,ノアザミ,ヤマイタチシダ,クロソヨゴ,ハエドクソウ,クサアジサイ,ガンクビソウ,クジャクゴケなどを観た.12時30分ころから昼休憩.集合写真を撮影して,森林館まで移動.森林館からまた散策した.道路沿いにオニイタヤやコバノハナイカダ,ヤマトキホコリ,オオカサゴケ,ヒロハイヌワラビ,ノササゲ,イワガネゼンマイ,ムクムクゴケ,ムラサキマユミ,ダイセンミツバツツジ,カンサイスノキ,ウラジロ,コセイタカスギゴケ,ヒノキゴケ,コスギバゴケ,ヒメクサリゴケ,コウヤコケシノブ,シシウド,ヤブニッケイ,マツブサ,ササクサ,ミツマタ,マツカゼソウ,チドリノキ,アカネ,タカノツメ,エビゴケ,ツルデンダ,フタバネゼニゴケ,コバノホソベリミズゴケ,オオスギゴケ,ミサキカグマ,モウセンゴケ,ミヤジマママコナなどが観察できた.15時頃解散した.今回のコースは龍頭峡セラピーロードという散策道になっていた.
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 第654回ヒコビア植物観察会は,令和3(2021)年10月17日(日)に広島県山県郡安芸太田町筒賀竜頭峡で開催され,時雨模様の中,39名の参加者があった.竜頭峡は1973年に広島県自然環境保全地域に指定された(面積31.4ha).1983年には,国際蘚苔類学会のエクスカーションが竜頭峡で行われ,外国から多数のコケ学者が訪れた.2019年には,竜頭峡が「日本の貴重なコケの森認定29号」に選ばれた.
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 渓谷内は秋色が濃く,高木層の[[トチノキ]]・[[サワグルミ]]・[[ホオノキ]]・[[カツラ]]などが50%以上落葉,亜高木層から低木層には[[コウヤミズキ]]・[[アサガラ]]・[[オオバアサガラ]]・[[シラキ]]・[[アワブキ]]・[[ウスゲクロモジ]]・[[クロモジ]]・[[コハウチワカエデ]]・[[ウリカエデ]]・[[コアジサイ]]などの落葉樹は紅葉・黄葉あるいは落葉,常緑樹の[[ハイイヌガヤ]]・[[チャボガヤ]]・[[シロダモ]]・[[ヒサカキ]]・[[ミヤマシキミ]]・[[サワダツ]]・[[ツゲ]]・[[アセビ]]などを伴う.草本層は[[イノデ]]・[[イノデモドキ]]・[[サイゴクイノデ]]・[[ヒロハイヌワラビ]]・[[タニイヌワラビ]]・[[キヨタキシダ]]・[[オオキジノオ]]・[[キジノオ]]などシダ類が多く,[[コカンスゲ]]・[[ミヤマカンスゲ]]・[[オクノカンスゲ]]・[[マルバフユイチゴ]]・[[エイザンスミレ]]などに[[アキチョウジ]]・[[サンインヒキオコシ]]・[[ヤマシロギク]]・[[キバナアキギリ]]などの花も見られた.右に曲がって,竜頭滝から奥の滝へ向かう.めずらしいイネ科の[[コウヤザサ]]があるが,すでに果穂は散っていた.[[ナメラダイモンジソウ]]の花が流れに沿って咲き,[[イワタバコ]]が岩上に群生している.[[アケボノシュスラン]]を確認.まき道の岩角に[[ゲンカイツツジ]]・[[ベニドウダン]]・[[クロソヨゴ]]・[[ナンキンナナカマド]]などがあり,ツガ林の一型であるが,特殊な植生で,同様な植生は三段峡や黒打峡にもある.竜頭滝から奥の滝の間にある垂直の岩壁には,[[ホンシャクナゲ]]や[[ヤマグルマ]]がある.この付近の路傍には[[モミジガサ]]・[[クサアジサイ]]・[[ハエドクソウ]]・[[ヒメアザミ]]・[[ヒメウワバミソウ]]・[[シコクスミレ]]・[[セリバオウレン]]・[[ヒメバライチゴ]]など興味ある種が見られる.
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 竜頭滝の谷は寒いので,車道に出て広場で昼食をとる.午後はコケを中心に観察した.熱帯系の[[コバノホソベリミズゴケ]]が大きな塊になって,岩壁に群がっている.この付近はコケが多く,とくに[[トゲアイバゴケ]]が注目される.本種は,一見,蘚類に見えるが苔類である.県内では,宮島や絵下山にもあるが量が少なく,竜頭峡のように大量にあるのは貴重な存在である.小型のシダ類である[[コウヤコケシノブ]]の葉上に微小な苔類が着生している.内田慎治さんの同定では,[[イボヒメクサリゴケ]]・[[ウニバヨウジョウゴケ]]・[[カビゴケ]]が確認された.このように生きた葉の上に着生する生態は熱帯系の苔類の特徴である.[[コウヤコケシノブ]]は竜頭峡で広く見られるが,葉上苔類があるのは限られた場所である.それは,昨年,関が蘚苔類学会で発表したように渓谷がS字形に屈曲する場所である.渓谷を流下する気流が断熱膨張をして空中湿度が高まるためと推定される.竜頭峡でもそれが確認された.[[エビゴケ]]がわずかであるが,岩隙に見つかった.
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竜頭峡で注目されるのはシダ類の[[クラガリシダ]]である.[[トチノキ]]などの巨樹に着生し,紐のように垂れ下がっている.和名は「暗がりに生えるシダ」と思う人が多いが,これは岐阜県中津川市中津川の「闇がり(くらがり)」で最初に発見されたことに因む.ここは恵那山の南面の谷で,中津川の支流になる.愛知県岡崎市本宮山にも闇苅渓谷があり,こちらの方が有名である.観察会の説明で,愛知県と書いたのは誤りであった.本種は,1889年(明治22年)に,三好学によって「闇がり」で採集され,牧野富太郎が新種Taenitis miyoshiana Makinoとして,植物学雑誌12:26(1898)で発表された.後に,新属を設立し,Drymotaenium miyoshianum (Makino)Makinoとして同誌15:102(1901)で発表された.新属のラテン語は,Drymo-「森の」+taenium「紐」の意味である.クラガリシダ属は1種だけで,日本・台湾・中国大陸[東部・西部]に分布している.
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三好学(1862-1939)は岐阜県の出身で,牧野とは同年である.東京帝国大学理科大学の植物学科を卒業,大学院に進学後,ドイツへ留学したエリート中のエリートで,小学校中退の牧野とは対照的である.三好は日本の植物学の基礎を築いた一人といわれ,専門は植物形態学であったが,当時,ようやく勃興しつつあった生態学をいち早く日本にもたらした.『生態学』という用語も三好の造語である.また天然記念物もドイツの制度を三好が移入したといわれ,貴族院議員として『史跡名勝天然記念物法』の制定にも尽力した.牧野と三好は同年でもあり,仲がよかったと思われる.牧野が矢田部良吉や松村任三ら東大教授と衝突し,出入り禁止になった頃は,三好はちょうどドイツに留学中であった.[[クラガリシダ]]は[[シシラン]]に,一見,似ているが,むしろ系統的には[[ノキシノブ]]に近い.今回,吉野由紀夫さんが歩道傍のコンクリート上に一面にクラガリシダの幼植物が茂っているのを見つけた.佐伯区湯来町恵下の不燃物処理場のアセスメントで,低木や亜高木の幹に[[クラガリシダ]]の幼植物が多数見つかった.これらから,[[クラガリシダ]]は[[ノキシノブ]]のように繁殖力が旺盛なシダと推察される.とはいえ,紐のように長く垂れ下がるには巨樹の樹幹のような安定した環境が必要である.辰野誠二先生のお話によれば,昭和初期には『恵下官林』[現在の国有林]の入り口[今,砕石場のあたり]には[[モミ]]の巨樹が林立し,その幹には一面に[[クラガリシダ]]が垂れ下がっていたという.現在の恵下谷には,1本だけ[[モミ]]の巨樹が残り,その幹には細々と[[クラガリシダ]]が着生している.
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<div style="text-align:right">(T. Seki 記)</div>
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==追補(2022年02月15日)==
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 2021年10月17日の第654回植物観察会は広島県山県郡安芸太田町の筒賀龍頭峡で開催された.天気は曇り時々雨.参加者39名.新型コロナウイルス感染症の影響で中止がつづいていたが,感染者数が少し減少したため実施した.10時に龍頭峡駐車場(渓谷中間の駐車場)に集合.コースの説明の後,出発.駐車場周辺に[[カラムシ]]や[[イノコヅチ]],[[ヘクソカズラ]],[[ウリカエデ]],[[ススキ]],[[ヒメジョオン]],[[トウバナ]],[[ミズヒキ]],[[キツネノボタン]],[[ノコンギク]],[[エノキグサ]],[[ノキシノブ]],[[サワグルミ]],[[ネムノキ]],[[アカマツ]],[[イロハモミジ]],[[アキチョウジ]],[[コアカソ]],[[ノリウツギ]],[[ノブドウ]],[[ヤマノイモ]],[[ホオノキ]],[[スギ]],[[メヤブマオ]],[[ツルウメモドキ]]などがあった.散策道沿いを進んだ.芝生広場までの道中で,[[オオツヅラフジ]]や[[ウワミズザクラ]],[[ミヤマカンスゲ]],[[ノガリヤス]],[[ヒメワラビ]],[[キヨタキシダ]],[[ミゾシダ]],[[クロモジ]],[[イヌガヤ]],[[コガクウツギ]],[[アブラチャン]],[[ミヤマイタチシダ]],[[ヤブニッケイ]],[[フトリュウビゴケ]],[[ビロードシダ]],[[ケイワガラミ]],[[ウラジロガシ]],[[ヒサカキ]],[[ヤブムラサキ]],[[ツリバナ]],[[マルバフユイチゴ]],[[オオバアサガラ]],[[ハクモウイノデ]],[[ヤマアジサイ]],[[フユイチゴ]],[[オオサンショウソウ]],[[ミヤマフユイチゴ]],[[サイゴクイノデ]],[[ゼンマイ]],[[ミヤマカタバミ]],[[コウヤミズキ]],[[ウリノキ]],[[ミヤマクロモジ]]([[ウスゲクロモジ]]),[[シロダモ]],[[イノデモドキ]],[[オクノカンスゲ]],[[ジュウモンジシダ]],[[サワダツ]],[[オニカナワラビ]],[[オオキジノオ]],[[ミズタビラコ]],[[コカンスゲ]],[[エイザンスミレ]],[[アカショウマ]],[[チャルメルソウ]],[[トチノキ]],[[カツラ]],[[リョウメンシダ]],[[ヤマシロギク]],[[アワブキ]],[[コウヤミズキ]],[[アカメガシワ]],[[ウグイスカグラ]],[[エゴノキ]],[[ムカゴイラクサ]],[[ヤブデマリ]],[[ウメモドキ]],[[ハンショウヅル]],[[ナワシログミ]],[[ヤブコウジ]],[[ツタ]],[[イワガラミ]],[[ヤマジノホトトギス]],[[タニイヌワラビ]],[[シシガシラ]],[[コウヤコケシノブ]],[[ヤワラシダ]],[[トウゲシバ]],[[イヌシダ]],[[チヂミザサ]],[[コバノミツバツツジ]],[[バイカツツジ]],[[コツクバネウツギ]],[[キヨスミイトゴケ]],[[コバノイシカグマ]],[[キヨスミヒメワラビ]],[[ビロードイチゴ]],[[キシノブイトゴケ]],[[ホソバコケシノブ]],[[ツタウルシ]],[[ゴトウヅル]],[[タニイヌワラビ]],[[ウツギ]],[[クロタキカズラ]],[[ツゲ]],[[チャボガヤ]],[[ツガ]],[[ヤブツバキ]],[[ヤマグルマ]],[[キッコウハグマ]],[[ヤマソテツ]],[[アクシバ]],[[ユズリハ]],[[サカキ]],[[サワグルミ]],[[ヒロハシノブイトゴケ]],[[クマノミズキ]],[[ケヤキ]],[[ウラジロガシ]],[[ヤブハギ]],[[コハウチワカエデ]],[[オオバヒヨドリバナ]],[[ツルリンドウ]],[[イタドリ]],[[ムラサキシキブ]],[[マルバアオダモ]],[[コバノガマズミ]],[[ヤマシグレ]],[[オオキジノオシダ]],[[ミヤマガマズミ]],[[ミツバアケビ]],[[ヤマザクラ]],[[コアジサイ]]などが確認された.橋を右折してさらに谷を進んだ.ナメラ滝までの道沿いで[[ヒガンマムシグサ]]や[[コセイタカスギゴケ]],[[ナガバモミジイチゴ]],[[テイカカズラ]],[[ミズスギモドキ]],[[ベニドウダン]],[[キウイフルーツ]],[[ウバユリ]],[[ミヤマシキミ]],[[ナメラダイモンジソウ]],[[シラキ]],[[ホドイモ]],[[アカシデ]],[[キバナアキギリ]],[[オオカモメヅル]],[[ヒメウワバミソウ]],[[コウヤザサ]],[[バイカオウレン]],[[アセビ]],[[サルトリイバラ]],[[アオダモ]],[[キブシ]],[[ソヨゴ]],[[サルナシ]],[[ショウジョウバカマ]],[[コバノフユイチゴ]],[[イヌツゲ]],[[シノブ]]などが観察できた.さらに道を進み二段滝を経て奥の滝に向かう道中で,[[オオイワカガミ]]や[[タムシバ]],[[ナンキンナナカマド]],[[ノギラン]],[[ショウジョウスゲ]],[[ネジキ]],[[ダイセンミツバツツジ]],[[リョウブ]],[[ツルアリドオシ]](果実),[[ゲンカイツツジ]],[[ヤマウルシ]],[[ハリガネワラビ]],[[アケボノシュスラン]],[[シライトソウ]],[[デワノタツナミ]],[[コバンノキ]],[[シキミ]],[[アケビ]],[[ミヤマカラマツ]],[[オオバコ]],[[ヒメバライチゴ]],[[セリバオウレン]],[[シコクスミレ]],[[モミジハグマ]],[[ノアザミ]],[[ヤマイタチシダ]],[[クロソヨゴ]],[[ハエドクソウ]],[[クサアジサイ]],[[ガンクビソウ]],[[クジャクゴケ]]などを観た.12時30分ころから昼休憩.集合写真を撮影して,森林館まで移動.森林館からまた散策した.道路沿いに[[オニイタヤ]]や[[コバノハナイカダ]],[[ヤマトキホコリ]],[[オオカサゴケ]],[[ヒロハイヌワラビ]],[[ノササゲ]],[[イワガネゼンマイ]],[[ムクムクゴケ]],[[ムラサキマユミ]],[[ダイセンミツバツツジ]],[[カンサイスノキ]],[[ウラジロ]],[[コセイタカスギゴケ]],[[ヒノキゴケ]],[[コスギバゴケ]],[[ヒメクサリゴケ]],[[コウヤコケシノブ]],[[シシウド]],[[ヤブニッケイ]],[[マツブサ]],[[ササクサ]],[[ミツマタ]],[[マツカゼソウ]],[[チドリノキ]],[[アカネ]],[[タカノツメ]],[[エビゴケ]],[[ツルデンダ]],[[フタバネゼニゴケ]],[[コバノホソベリミズゴケ]],[[オオスギゴケ]],[[ミサキカグマ]],[[モウセンゴケ]],[[ミヤジマママコナ]]などが観察できた.15時頃解散した.今回のコースは龍頭峡セラピーロードという散策道になっていた.
 
<div style="text-align:right">(H. Tsubota & S. Uchida 記)</div>
 
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[[Category:植物]]
 
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[[Category:2020年度]]
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[[Category:2021]]
 
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[[Category:ヒコビア]]
 
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[[Category:実習]]
 
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2022年2月16日 (水) 22:57時点における最新版

ヒコビアミニレター No. 531(2021年11月15日)

 第654回ヒコビア植物観察会は,令和3(2021)年10月17日(日)に広島県山県郡安芸太田町筒賀竜頭峡で開催され,時雨模様の中,39名の参加者があった.竜頭峡は1973年に広島県自然環境保全地域に指定された(面積31.4ha).1983年には,国際蘚苔類学会のエクスカーションが竜頭峡で行われ,外国から多数のコケ学者が訪れた.2019年には,竜頭峡が「日本の貴重なコケの森認定29号」に選ばれた.  渓谷内は秋色が濃く,高木層のトチノキサワグルミホオノキカツラなどが50%以上落葉,亜高木層から低木層にはコウヤミズキアサガラオオバアサガラシラキアワブキウスゲクロモジクロモジコハウチワカエデウリカエデコアジサイなどの落葉樹は紅葉・黄葉あるいは落葉,常緑樹のハイイヌガヤチャボガヤシロダモヒサカキミヤマシキミサワダツツゲアセビなどを伴う.草本層はイノデイノデモドキサイゴクイノデヒロハイヌワラビタニイヌワラビキヨタキシダオオキジノオキジノオなどシダ類が多く,コカンスゲミヤマカンスゲオクノカンスゲマルバフユイチゴエイザンスミレなどにアキチョウジサンインヒキオコシヤマシロギクキバナアキギリなどの花も見られた.右に曲がって,竜頭滝から奥の滝へ向かう.めずらしいイネ科のコウヤザサがあるが,すでに果穂は散っていた.ナメラダイモンジソウの花が流れに沿って咲き,イワタバコが岩上に群生している.アケボノシュスランを確認.まき道の岩角にゲンカイツツジベニドウダンクロソヨゴナンキンナナカマドなどがあり,ツガ林の一型であるが,特殊な植生で,同様な植生は三段峡や黒打峡にもある.竜頭滝から奥の滝の間にある垂直の岩壁には,ホンシャクナゲヤマグルマがある.この付近の路傍にはモミジガサクサアジサイハエドクソウヒメアザミヒメウワバミソウシコクスミレセリバオウレンヒメバライチゴなど興味ある種が見られる.  竜頭滝の谷は寒いので,車道に出て広場で昼食をとる.午後はコケを中心に観察した.熱帯系のコバノホソベリミズゴケが大きな塊になって,岩壁に群がっている.この付近はコケが多く,とくにトゲアイバゴケが注目される.本種は,一見,蘚類に見えるが苔類である.県内では,宮島や絵下山にもあるが量が少なく,竜頭峡のように大量にあるのは貴重な存在である.小型のシダ類であるコウヤコケシノブの葉上に微小な苔類が着生している.内田慎治さんの同定では,イボヒメクサリゴケウニバヨウジョウゴケカビゴケが確認された.このように生きた葉の上に着生する生態は熱帯系の苔類の特徴である.コウヤコケシノブは竜頭峡で広く見られるが,葉上苔類があるのは限られた場所である.それは,昨年,関が蘚苔類学会で発表したように渓谷がS字形に屈曲する場所である.渓谷を流下する気流が断熱膨張をして空中湿度が高まるためと推定される.竜頭峡でもそれが確認された.エビゴケがわずかであるが,岩隙に見つかった. 竜頭峡で注目されるのはシダ類のクラガリシダである.トチノキなどの巨樹に着生し,紐のように垂れ下がっている.和名は「暗がりに生えるシダ」と思う人が多いが,これは岐阜県中津川市中津川の「闇がり(くらがり)」で最初に発見されたことに因む.ここは恵那山の南面の谷で,中津川の支流になる.愛知県岡崎市本宮山にも闇苅渓谷があり,こちらの方が有名である.観察会の説明で,愛知県と書いたのは誤りであった.本種は,1889年(明治22年)に,三好学によって「闇がり」で採集され,牧野富太郎が新種Taenitis miyoshiana Makinoとして,植物学雑誌12:26(1898)で発表された.後に,新属を設立し,Drymotaenium miyoshianum (Makino)Makinoとして同誌15:102(1901)で発表された.新属のラテン語は,Drymo-「森の」+taenium「紐」の意味である.クラガリシダ属は1種だけで,日本・台湾・中国大陸[東部・西部]に分布している. 三好学(1862-1939)は岐阜県の出身で,牧野とは同年である.東京帝国大学理科大学の植物学科を卒業,大学院に進学後,ドイツへ留学したエリート中のエリートで,小学校中退の牧野とは対照的である.三好は日本の植物学の基礎を築いた一人といわれ,専門は植物形態学であったが,当時,ようやく勃興しつつあった生態学をいち早く日本にもたらした.『生態学』という用語も三好の造語である.また天然記念物もドイツの制度を三好が移入したといわれ,貴族院議員として『史跡名勝天然記念物法』の制定にも尽力した.牧野と三好は同年でもあり,仲がよかったと思われる.牧野が矢田部良吉や松村任三ら東大教授と衝突し,出入り禁止になった頃は,三好はちょうどドイツに留学中であった.クラガリシダシシランに,一見,似ているが,むしろ系統的にはノキシノブに近い.今回,吉野由紀夫さんが歩道傍のコンクリート上に一面にクラガリシダの幼植物が茂っているのを見つけた.佐伯区湯来町恵下の不燃物処理場のアセスメントで,低木や亜高木の幹にクラガリシダの幼植物が多数見つかった.これらから,クラガリシダノキシノブのように繁殖力が旺盛なシダと推察される.とはいえ,紐のように長く垂れ下がるには巨樹の樹幹のような安定した環境が必要である.辰野誠二先生のお話によれば,昭和初期には『恵下官林』[現在の国有林]の入り口[今,砕石場のあたり]にはモミの巨樹が林立し,その幹には一面にクラガリシダが垂れ下がっていたという.現在の恵下谷には,1本だけモミの巨樹が残り,その幹には細々とクラガリシダが着生している.

(T. Seki 記)

追補(2022年02月15日)

 2021年10月17日の第654回植物観察会は広島県山県郡安芸太田町の筒賀龍頭峡で開催された.天気は曇り時々雨.参加者39名.新型コロナウイルス感染症の影響で中止がつづいていたが,感染者数が少し減少したため実施した.10時に龍頭峡駐車場(渓谷中間の駐車場)に集合.コースの説明の後,出発.駐車場周辺にカラムシイノコヅチヘクソカズラウリカエデススキヒメジョオントウバナミズヒキキツネノボタンノコンギクエノキグサノキシノブサワグルミネムノキアカマツイロハモミジアキチョウジコアカソノリウツギノブドウヤマノイモホオノキスギメヤブマオツルウメモドキなどがあった.散策道沿いを進んだ.芝生広場までの道中で,オオツヅラフジウワミズザクラミヤマカンスゲノガリヤスヒメワラビキヨタキシダミゾシダクロモジイヌガヤコガクウツギアブラチャンミヤマイタチシダヤブニッケイフトリュウビゴケビロードシダケイワガラミウラジロガシヒサカキヤブムラサキツリバナマルバフユイチゴオオバアサガラハクモウイノデヤマアジサイフユイチゴオオサンショウソウミヤマフユイチゴサイゴクイノデゼンマイミヤマカタバミコウヤミズキウリノキミヤマクロモジウスゲクロモジ),シロダモイノデモドキオクノカンスゲジュウモンジシダサワダツオニカナワラビオオキジノオミズタビラココカンスゲエイザンスミレアカショウマチャルメルソウトチノキカツラリョウメンシダヤマシロギクアワブキコウヤミズキアカメガシワウグイスカグラエゴノキムカゴイラクサヤブデマリウメモドキハンショウヅルナワシログミヤブコウジツタイワガラミヤマジノホトトギスタニイヌワラビシシガシラコウヤコケシノブヤワラシダトウゲシバイヌシダチヂミザサコバノミツバツツジバイカツツジコツクバネウツギキヨスミイトゴケコバノイシカグマキヨスミヒメワラビビロードイチゴキシノブイトゴケホソバコケシノブツタウルシゴトウヅルタニイヌワラビウツギクロタキカズラツゲチャボガヤツガヤブツバキヤマグルマキッコウハグマヤマソテツアクシバユズリハサカキサワグルミヒロハシノブイトゴケクマノミズキケヤキウラジロガシヤブハギコハウチワカエデオオバヒヨドリバナツルリンドウイタドリムラサキシキブマルバアオダモコバノガマズミヤマシグレオオキジノオシダミヤマガマズミミツバアケビヤマザクラコアジサイなどが確認された.橋を右折してさらに谷を進んだ.ナメラ滝までの道沿いでヒガンマムシグサコセイタカスギゴケナガバモミジイチゴテイカカズラミズスギモドキベニドウダンキウイフルーツウバユリミヤマシキミナメラダイモンジソウシラキホドイモアカシデキバナアキギリオオカモメヅルヒメウワバミソウコウヤザサバイカオウレンアセビサルトリイバラアオダモキブシソヨゴサルナシショウジョウバカマコバノフユイチゴイヌツゲシノブなどが観察できた.さらに道を進み二段滝を経て奥の滝に向かう道中で,オオイワカガミタムシバナンキンナナカマドノギランショウジョウスゲネジキダイセンミツバツツジリョウブツルアリドオシ(果実),ゲンカイツツジヤマウルシハリガネワラビアケボノシュスランシライトソウデワノタツナミコバンノキシキミアケビミヤマカラマツオオバコヒメバライチゴセリバオウレンシコクスミレモミジハグマノアザミヤマイタチシダクロソヨゴハエドクソウクサアジサイガンクビソウクジャクゴケなどを観た.12時30分ころから昼休憩.集合写真を撮影して,森林館まで移動.森林館からまた散策した.道路沿いにオニイタヤコバノハナイカダヤマトキホコリオオカサゴケヒロハイヌワラビノササゲイワガネゼンマイムクムクゴケムラサキマユミダイセンミツバツツジカンサイスノキウラジロコセイタカスギゴケヒノキゴケコスギバゴケヒメクサリゴケコウヤコケシノブシシウドヤブニッケイマツブサササクサミツマタマツカゼソウチドリノキアカネタカノツメエビゴケツルデンダフタバネゼニゴケコバノホソベリミズゴケオオスギゴケミサキカグマモウセンゴケミヤジマママコナなどが観察できた.15時頃解散した.今回のコースは龍頭峡セラピーロードという散策道になっていた.

(H. Tsubota & S. Uchida 記)

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